【毎日コラム】スポーツの日に考える、女性と運動習慣。「時間がない」人のための最小量

今日はスポーツの日です。運動会や地域のイベントで、久しぶりに体を動かしたという方もいらっしゃるかもしれません。
「運動したほうがいいのは分かっている。でも、時間がない」。保健室でいちばんよく伺う言葉のひとつです。そしてこれは、気持ちの問題ではなく、データにはっきり表れている”構造”の問題でもあります。
今日は、日本の女性がどのくらい動けているのか、そして「まとまった時間が取れない人」にとって現実的な運動量はどのくらいなのかを、公的統計と研究から整理します。
1|いちばん動けていないのは、40代の女性
厚生労働省の「令和6年 国民健康・栄養調査」によると、運動習慣がある人(1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上続けている人)の割合は、女性31.5%、男性38.5%でした。
女性を年代別に見ると、はっきりとした”谷”があります。

20代22.7%、30代19.5%、40代17.2%。50代で26.5%に戻り、60代33.0%、70歳以上では42.6%になります。子育てと仕事が重なる30〜40代で、運動習慣のある人は5〜6人に1人まで減っているのです。
1日の歩数も、女性の平均は6,495歩、男性は7,763歩でした。
2|できない理由は「意欲」ではなく「時間の取り合い」
スポーツ庁の「令和7年度 スポーツの実施状況等に関する世論調査」では、週1日以上運動・スポーツをしている成人は、女性48.8%、男性55.0%でした。男女の差は、調査が始まって以来もっとも大きくなっています。
30代の女性が挙げた「運動できない理由」は、仕事が忙しい34.4%、面倒くさい31.3%、育児が忙しい29.0%、家事が忙しい28.9%でした。同じ30代の男性は、仕事44.3%、家事17.6%、育児16.0%です(インターネット調査)。
女性では、仕事・育児・家事がほぼ同じ重さで並んでいます。ひとつを片づけても、次が待っている。運動は、その全部が終わったあとに残った時間でするもの、という位置に置かれがちです。
そして、この傾向は大人になってから始まるものではありません。スポーツ庁の令和7年度の調査では、中学2年生の女子の21.7%が、体育の授業を除く1週間の運動時間が60分未満でした。体を動かす習慣の男女差は、すでに10代から開いています。
3|目標は「週150分」。でも、そこに届かなくても意味がある
世界保健機関(WHO)は、成人に週150〜300分の中強度の身体活動を勧めています。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、成人について次のように示しています。
- 歩行またはそれと同等以上の身体活動を、1日60分以上(歩数にして約8,000歩以上)
- 息がはずみ汗をかく程度の運動を、週60分以上
- 筋力トレーニングを、週2〜3日
「1日60分」と聞くと、それだけで気が遠くなる方もいるかもしれません。ただ、ここでいう身体活動には、通勤、買い物、掃除、こどもの送り迎え、抱っこでの散歩など、生活の中の動きがすべて含まれます。運動着に着替えてする「運動」だけではありません。
さらに、ここ数年の研究は、「目標に届かない量でも、やらないよりずっとよい」ことをくり返し示しています。ここからは、時間のない方にとって心強い研究を4つご紹介します。
4|歩数:1万歩でなくてよい
15の研究、約4万7千人のデータをまとめた分析(Paluch ら、Lancet Public Health 2022年)では、歩数がもっとも少ない群に比べて、1日およそ5,800歩の群では、死亡のリスクが4割低くなっていました。60歳未満では、効果は8,000〜10,000歩あたりで頭打ちになります。
つまり、「1万歩歩けないなら意味がない」のではなく、3,000歩台から5,000〜6,000歩台へ上がるところに、いちばん大きな差があります。日本の女性の平均は約6,500歩。ここからあと1,500歩、時間にして15分ほど足せば、国の目安の8,000歩に届きます。

5|週末にまとめて:それでもよい
平日は無理でも、週末なら動ける、という方もいるでしょう。英国の約6万人を追跡した研究(O’Donovan ら、JAMA Intern Med 2017年)では、週1〜2回にまとめて運動する「週末戦士」型の人も、運動しない人に比べて死亡のリスクが3割低くなっていました。
毎日こつこつ、が理想とは限りません。続けられる形が、その人にとっての正解です。
6|1〜2分の「息が上がる動き」を、1日3回
運動の習慣がまったくない人を対象に、腕時計型の活動量計で生活の中の動きを記録した研究(Stamatakis ら、Nature Medicine 2022年)があります。階段を駆け上がる、バスに間に合うよう早足で歩く、こどもと全力で遊ぶ。そうした1〜2分の息が上がる動きが1日に3回ほどあった人は、まったくない人に比べて、死亡のリスクが38〜40%低くなっていました。
観察研究ですので、「これをすれば必ず寿命が延びる」とまでは言えません。それでも、「運動の時間」がゼロでも、生活の中の”ちょっときつい動き”には意味がありそうだ、ということは言えます。エレベーターではなく階段を使う。抱っこで坂を上る。それはもう、立派な運動です。
7|筋トレは、週に30〜60分で十分
日本の研究者による分析(Momma ら、Br J Sports Med 2022年)では、筋力トレーニングをしている人は、していない人に比べて、死亡や心血管疾患、がん、糖尿病のリスクが10〜17%低くなっていました。そして、その効果がもっとも大きかったのは、週に30〜60分の範囲でした。
週に30分なら、1回10分を週3回です。スクワット、かかと上げ、壁を使った腕立て。こどもが寝たあとの10分、歯みがきのあいだのかかと上げでも、積み上がっていきます。

8|女性は、同じ量でより大きな利益を得るかもしれない
米国の約41万人を分析した研究(Ji ら、J Am Coll Cardiol 2024年)では、定期的に運動している人の死亡リスクの低下は、男性で15%、女性で24%でした。女性のほうが、少ない運動量で同じ程度の利益を得ていた、という報告です。
観察研究であり、理由もまだ十分に分かっていません。ですから「女性は少なくてよい」と言い切ることはできません。ただ、時間が取れずに悩んでいる女性にとって、「少しでもやる意味は大きい」という後押しにはなる結果です。
9|月経周期に合わせるべきか
「生理の時期によって、運動の効果や成績が変わる」という情報を目にすることがあります。月経周期と運動パフォーマンスの関係を調べたメタ分析(McNulty ら、Sports Med 2020年)では、月経期にわずかにパフォーマンスが下がる傾向はあったものの、その差はごく小さく、研究の質も低いと結論されています。
周期に合わせてメニューを細かく変える必要があるという根拠は、今のところありません。それよりも、ご自分の体調を基準にしてください。つらい日は休む、動ける日に動く。それで十分です。月経痛や月経前の不調が強く、動くどころではないという方は、婦人科で相談できます。
10|保健室でお手伝いできること
「動きたい気持ちはあるけれど、何から始めたらいいか分からない」「動くと腰や膝が痛む」「尿もれが気になって、運動に踏み出せない」。そうしたご相談を、女性とこどもの保健室ではお受けしています。
- いまの体の状態(姿勢、筋力、骨盤底、関節の動き)の確認
- 生活の流れを伺ったうえでの、「足せる場所」探し
- 10分でできる、ご自宅用のメニューづくり
- 痛みや尿もれがある場合の、動き方の工夫
託児がありますので、お子さん連れでもお越しいただけます。胸の痛みや強い息切れ、動悸などがある場合は、運動を始める前に医療機関でご相談ください。
11|今日から持ち帰っていただきたい5つのこと
- 運動習慣のある女性は、30代で19.5%、40代で17.2%。動けないのは、あなただけではありません。
- 理由は意欲ではなく、仕事・育児・家事との「時間の取り合い」です。
- 歩数は1万歩でなくて大丈夫。5,000〜6,000歩台でも差が出て、目安は8,000歩です。
- 週末にまとめても、1〜2分の階段でも、週30分の筋トレでも、研究では意味のある差が出ています。
- 月経周期に合わせる必要はありません。動ける日に、できる分だけ。
スポーツの日は、「運動を始める日」でなくてかまいません。「いつもより15分だけ多く歩く日」で、十分です。
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千葉県流山市(流山セントラルパーク駅 徒歩1分)の「女性とこどもの保健室」は、理学療法士が担当する、託児つきの女性専門治療院です。このコラムの内容に関連するメニューをご紹介します。
- パーソナルトレーニング:理学療法士が、姿勢の改善・運動不足の解消・筋力づくりを、目的に合わせてサポートします。
- パーソナルヨガレッスン:理学療法士による、目的と体の状態に合わせたヨガレッスン。
メニュー・クーポンの一覧を見る(ホットペッパービューティー)
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ご相談・ご予約
女性とこどもの保健室は、理学療法士・助産師・看護師・保育士が連携して、妊活から更年期まで女性の体をみる施設です。流山本院は保育士・看護師による託児付き(生後1か月からお預かりしています)、勝どき出張院は完全予約制のプライベートサロン、横浜は産婦人科医と連携した骨盤底筋ケアを行っています。

「病院に行くほどではないけれど、誰かに診てもらいたい」——その段階でのご相談を、いちばん歓迎しています。
本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。
参考文献・出典
- 厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」結果の概要(2025年公表).
- スポーツ庁「令和7年度 スポーツの実施状況等に関する世論調査」.
- スポーツ庁「令和7年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査」.
- World Health Organization. WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour. 2020.
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」.
- Paluch AE, et al. Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts. Lancet Public Health. 2022;7(3):e219-e228.
- O’Donovan G, et al. Association of “weekend warrior” and other leisure time physical activity patterns with risks for all-cause, cardiovascular disease, and cancer mortality. JAMA Intern Med. 2017;177(3):335-342.
- Stamatakis E, et al. Association of wearable device-measured vigorous intermittent lifestyle physical activity with mortality. Nat Med. 2022;28(12):2521-2529.
- Momma H, et al. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022;56(13):755-763.
- Ji H, et al. Sex differences in association of physical activity with all-cause and cardiovascular mortality. J Am Coll Cardiol. 2024;83(8):783-793.
- McNulty KL, et al. The effects of menstrual cycle phase on exercise performance in eumenorrheic women: a systematic review and meta-analysis. Sports Med. 2020;50(10):1813-1827.

