【毎日コラム】こどもの足と靴。扁平足・浮き指・インソール、研究で分かっていること

「うちの子、土踏まずがないんです」「浮き指と言われました」「インソールを入れたほうがいいですか」「ハイカットの硬い靴がいいと聞いたのですが」。
こどもの足と靴についてのご相談は、保健室でもとても多いテーマです。そして、情報があふれているわりに、研究で確かめられていることと、そうでないことの区別がつきにくい分野でもあります。
今日は、扁平足・浮き指・インソール・靴のサイズ・O脚X脚について、分かっていることと分かっていないことを、できるだけ正直に整理します。
1|土踏まずは、生まれつきあるものではない
赤ちゃんの足の裏は、ぷっくりとした脂肪に覆われていて、土踏まずは見えません。歩き始めてからも、しばらくは平らなままです。土踏まずは、成長とともに少しずつできてくるものです。
オーストリアで3〜6歳のこども835人の足を調べた研究(Pfeiffer ら、Pediatrics 2006年)があります。

柔らかい扁平足(立つと平らだが、つま先立ちをすると土踏まずが現れるタイプ)は、全体の44%に見られました。年齢別では、3歳で54%、6歳では24%。年齢が上がるにつれて、はっきりと減っていきます。
一方、治療が必要と判断された扁平足は、1%未満でした。
3歳児の半数以上に見られるものを、「異常」と呼ぶことはできません。幼児期の扁平足のほとんどは、発達の途中の姿です。
2|インソールで、土踏まずは「つくれる」のか
同じ研究では、調べたこどもの10%が、すでにアーチサポート(土踏まずを支える中敷き)を使っていました。著者らはこれについて、「行われている治療の90%以上は不要である」と結論しています。
この問いには、古くから比較試験があります。1989年の研究(Wenger ら、J Bone Joint Surg Am)は、柔らかい扁平足の幼児を、矯正靴、中敷き、特別なことをしない群に分けて3年間追跡しました。結果、どの群も同じように改善し、差はありませんでした。
2022年のコクランレビュー(Evans ら)も、痛みのないこどもの扁平足に対して、高額なオーダーメイドのインソールを使うことを支持する根拠はない、とまとめています。
つまり、「インソールを入れたから土踏まずができた」ように見えても、それは成長によって自然にできたものと区別がつかないのです。
誤解のないように申し添えると、インソールがまったく無意味ということではありません。足に痛みがある場合には、痛みをやわらげる目的で使われることがあります。その判断は、整形外科で行われます。
3|受診したほうがよい扁平足
ほとんどは見守りでよい一方で、次のような場合は小児整形外科・整形外科でご相談ください。
- 足やふくらはぎの痛みを、くり返し訴える
- つま先立ちをしても、土踏まずが現れない(硬い扁平足)
- 足首が硬く、しゃがみにくい
- 左右で形が大きく違う
- かかとが外側に強く倒れている、内くるぶしの下が大きく出っ張っている
- すぐ疲れて歩きたがらない状態が続き、生活に支障がある
4|「浮き指」は、どこまで心配すべきか
立ったときに足の指が地面についていない「浮き指」。園や学校での足型測定で指摘され、心配になった方もいるでしょう。
浮き指については、まず定義と測り方が研究によって違います。判定の基準によっては、幼児の9割近くに見られるという報告もあります。これほど多くの子に見られるものを、すぐに問題とみなしてよいかは、慎重に考える必要があります。
そして、「浮き指のこどもが、将来、姿勢が悪くなる・けがをしやすくなる・運動能力が下がる」ことを、長期間追いかけて確かめた研究は、今のところ見当たりません。
ですから、現時点で言えるのは、「浮き指がある=将来困る、とは証明されていない」ということです。指摘されたからといって、高額な矯正グッズや特別な靴をあわてて買う必要はありません。

5|はだしは、足によいのか
「はだし保育で土踏まずができる」という話も、よく耳にします。
インドで約2,300人のこどもを調べた研究(Rao・Joseph、J Bone Joint Surg Br 1992年)では、扁平足の割合は、靴をはいて育った子で8.6%、はだしで育った子で2.8%でした。ドイツと南アフリカのこどもを比べた研究(Hollander ら、2017年)でも、ふだんはだしで過ごすこどものほうが、土踏まずが高い傾向がありました。
ただし、これらはいずれも、ある時点での比較(横断研究)です。「はだしで過ごさせたら、土踏まずが高くなった」ことを実験で確かめたものではなく、生活環境や体格など、ほかの違いが影響している可能性は残ります。
安全な場所で、はだしでたくさん遊ぶ。それは、足の裏でいろいろな感触を味わう楽しい経験です。ただ、「はだしにしないと足が育たない」とまでは言えません。
6|靴選びで、いちばん確かなのは「サイズ」
靴の機能についての研究が限られる中で、はっきりしていることがひとつあります。多くのこどもが、小さすぎる靴をはいている、ということです。
オーストリアの幼稚園児を調べた研究(Klein ら、2009年)では、外ばきの69.4%が、足に対して短すぎました。そして、靴が短いほど、親指が外側へ曲がる角度が大きくなる傾向がありました。
こどもは、靴がきつくても自分からは言いません。足の成長は早く、半年前にちょうどよかった靴は、もう小さいかもしれません。
米国小児科学会(AAP)や米国足病医学会(APMA)などが示している目安は、次のとおりです。
- 歩き始める前の赤ちゃんに、靴は必要ない(防寒や保護の目的は別)
- つま先には、大人の指1本分ほど(約10〜15mm)の余裕を
- 小さいうちは、サイズをこまめに確認する(月に1回が目安)
- 中敷きを取り出せる靴なら、中敷きの上に立たせて、つま先の余裕を目で確かめる
- 左右で大きさが違うときは、大きいほうの足に合わせる
- 夕方は足がやや大きくなるので、午後に合わせるとよい
お下がりの靴は、前の持ち主の足の形に合わせて底がすり減っていることがあります。かかとが大きく片減りしているものは、避けたほうが無難です。
7|「ハイカット」「硬い靴」がよい、という根拠は
「足首を支えるハイカットがよい」「かかとが硬い靴でないといけない」という説明を聞くことがあります。しかし、健康なこどもについて、ハイカットや硬い靴が足の発達によいことを示した研究は、見当たりません。
こども靴についての研究をまとめた報告では、靴をはくと、はだしのときに比べて歩き方が変わる(歩幅が広くなる、足の中の動きが小さくなる)ことが示されています。それが将来の足にとってよいのか悪いのかは、まだ分かっていません。
現時点で無理なく言えるのは、次のことくらいです。足の大きさに合っていること。つま先が自由に動くこと。足の指のつけ根で曲がること。脱げにくいよう、ベルトやひもで留められること。そして、こども本人が歩きやすそうにしていること。価格の高さは、足へのよさを保証しません。

8|O脚・X脚・内股歩き
脚の形も、成長とともに変わります。
- 2歳ごろまで:O脚ぎみが普通です
- 3〜4歳ごろ:今度はX脚ぎみになります
- 7歳ごろ:大人に近い形に落ち着きます
内股歩き(うちわ歩行)も、多くは成長にともなう正常の範囲で、自然に目立たなくなります。米国小児科学会は、内股歩きに対する矯正靴や装具には効果がない、としています。
次のような場合は、整形外科でご相談ください。
- 2歳を過ぎても、O脚が強い・進んでいる
- 片脚だけ曲がっている、左右差がはっきりしている
- 7歳を過ぎてX脚が強くなってきた
- 身長がとても低い、歩き方が不安定、痛みがある
- よく転ぶ状態が続き、けがが多い
9|保健室でお手伝いできること
女性とこどもの保健室では、理学療法士がお子さんの足と歩き方、遊びの中での体の使い方を拝見します。
- 扁平足が「柔らかいタイプ」かどうかの確認(つま先立ちでの様子など)
- 足首の柔らかさ、しゃがむ・片足立ち・ジャンプなどの動きの確認
- いまはいている靴のサイズと、すり減り方のチェック
- 足の指やふくらはぎを使う遊びのご提案
拝見したうえで、受診したほうがよい所見があれば、整形外科への受診をおすすめします。私たちは診断や装具の処方を行う立場にはありませんが、「受診するほどのことなのか、分からない」という段階でのご相談を歓迎しています。靴をお持ちのうえ、お越しください。
10|今日から持ち帰っていただきたい5つのこと
- 幼児の扁平足はごく普通です。3歳で54%、6歳で24%。治療が必要なものは1%未満でした。
- 痛みのない扁平足に、高額なインソールや矯正靴を使う根拠はありません。
- 浮き指が将来の問題につながることを確かめた長期の研究は、今のところありません。
- 靴でいちばん大事なのはサイズです。約7割の子が、短すぎる靴をはいていました。つま先に指1本分の余裕を。
- 痛み・硬さ・左右差・強い変形があるときは、整形外科へ。
こどもの足は、完成形ではなく、育っている途中です。あわてて「直す」前に、まずは靴の中敷きを取り出して、いまの足と比べてみてください。
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「病院に行くほどではないけれど、誰かに診てもらいたい」——その段階でのご相談を、いちばん歓迎しています。
本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。
参考文献・出典
- Pfeiffer M, Kotz R, Ledl T, Hauser G, Sluga M. Prevalence of flat foot in preschool-aged children. Pediatrics. 2006;118(2):634-639.
- Evans AM, Rome K, Carroll M, Hawke F. Foot orthoses for treating paediatric flat feet. Cochrane Database Syst Rev. 2022;(1):CD006311.
- Wenger DR, Mauldin D, Speck G, Morgan D, Lieber RL. Corrective shoes and inserts as treatment for flexible flatfoot in infants and children. J Bone Joint Surg Am. 1989;71(6):800-810.
- Rao UB, Joseph B. The influence of footwear on the prevalence of flat foot. A survey of 2300 children. J Bone Joint Surg Br. 1992;74(4):525-527.
- Hollander K, et al. Growing-up (habitually) barefoot influences the development of foot and arch morphology in children and adolescents. Sci Rep. 2017;7:8079.
- Klein C, Groll-Knapp E, Kundi M, Kinz W. Increased hallux angle in children and its association with insufficient length of footwear: a community based cross-sectional study. BMC Musculoskelet Disord. 2009;10:159.
- Wegener C, Hunt AE, Vanwanseele B, Burns J, Smith RM. Effect of children’s shoes on gait: a systematic review and meta-analysis. J Foot Ankle Res. 2011;4:3.
- American Academy of Pediatrics. HealthyChildren.org(こどもの靴、内股歩き、O脚・X脚に関する保護者向け情報).
- American Podiatric Medical Association. Children’s footwear に関する情報.

