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【毎日コラム】女性の肩こりに、いちばん根拠があるのは「1日2分」の運動。マッサージ・姿勢との付き合い方

女性の肩こりに、いちばん根拠があるのは「1日2分」の運動。マッサージ・姿勢との付き合い方

「肩こりがひどくて」——保健室で、いちばんよく聞く言葉のひとつです。マッサージに行くと楽になるけれど、数日で戻る。姿勢が悪いせいだと言われるけれど、何をどう直せばいいのか分からない。そんな声も多く聞きます。

今日は、女性の肩こりについて、研究で分かっていることを整理します。先にお伝えすると、いちばん根拠がはっきりしているのは、マッサージでも姿勢の矯正でもなく、「1日2分の運動」でした。

1|女性の肩こりは、男性の約1.8倍

厚生労働省の国民生活基礎調査(2025年)では、自覚症状のある人の割合を症状別に調べています。女性で多い症状は、1位が腰痛(人口1,000人あたり100.8人)、2位が肩こり(89.2人)です。男性の肩こりは48.3人なので、女性は男性の約1.8倍になります。

「女性の自覚症状の1位は肩こり」と言われることがありますが、それは2019年の調査までの話で、2022年・2025年の調査では腰痛が1位、肩こりが2位でした。それでも、女性の10人に1人近くが肩こりを自覚しているのは変わりません。

なお、海外の研究で「首の痛み(neck pain)」と呼ばれるものは、日本の「肩こり」とおおむね重なります。日本理学療法士協会のガイドラインにも、「日本においては、肩甲骨周囲の疼痛や違和感は肩こりとして捉えられている場合がある」と書かれています。この記事でも、首の痛みの研究を肩こりの根拠として使います。

2|いちばん根拠があるのは「鍛える」こと

デンマークの研究チームは、週30時間以上働き、首や肩の痛みが頻繁にある198人(うち女性174人)を、3つのグループに分けました。ゴムチューブを使った首・肩の運動を「1日2分」行うグループ、「1日12分」行うグループ、健康情報を受け取るだけのグループです。週5日、10週間続けたところ、痛み(0〜10点)は、情報だけのグループに比べて、2分のグループで1.4点、12分のグループで1.9点下がりました。2分と12分で、大きな差はありませんでした。

研究を幅広く集めたコクラン・レビュー(2015年、27の試験)でも、慢性的な首の痛みに対して、首・肩甲骨まわり・腕の筋力トレーニングは、痛みを中〜大きく改善していました。一方で、ストレッチだけ、一般的な体力づくりだけ、呼吸法だけでは、痛みや機能の変化は期待できない可能性がある、とされています。

肩こりへの対処と研究の結果。首・肩の筋力トレーニング1日2分×10週で痛みが有意に減少、ストレッチのみは効果が期待できない可能性、マッサージはプラセボと差が証明されず、姿勢改善の運動は行わないことを条件付きで推奨

つまり、「伸ばす」より「鍛える」。しかも、長い時間は必要ありません。1日2分を10週間、というのが研究で確かめられた量です。

研究で使われたのは、ゴムチューブを使って、腕を横に上げる、肩甲骨を寄せる、といった首・肩まわりの筋肉に少し負荷をかける運動です。「毎日12分」でも効果は同じくらいでした。長く頑張るより、短くても毎日続けることのほうが、結果につながっています。パソコン作業中心の職場で働く、慢性的な肩の痛みのある女性48人を対象にした別の試験でも、痛む筋肉を鍛える10週間のトレーニングで、最悪時の痛みが約8割減りました。一方、自転車こぎのような全身運動では、一時的な軽減にとどまっています。

3|マッサージは、気持ちいい。でも

ここは正直に書きます。コクラン・レビュー(2024年、33の試験、1,994人)では、首の痛みに対するマッサージを、偽の施術(プラセボ)と比べました。結果は、12週までの痛み・機能・生活の質に「ほとんど差がないか、全くない可能性がある」でした。痛みは0〜100点で3.4点の改善でしたが、統計的には差があるとは言えませんでした。

ただし、4週間に8回以上、1回30分以上という「多めの量」では、意味のある差が見られたという分析もあります。多くの試験が1回だけの施術だったため、量が足りなかった可能性も残っています。

「ボキッ」と鳴らす矯正(マニピュレーション)については、まれですが重い副作用の報告があることが知られています。日本理学療法士協会のガイドラインでも、首・胸の背骨への他動的な関節モビライゼーションは「行わないことを条件付きで推奨」とされています。

保健室の立場からも、「ほぐしてもらうだけで終わらせない」ことをお勧めします。マッサージで楽になった感覚そのものは大切です。ただ、それを「動かす時間」とセットにしないと、数日で戻る、をくり返すことになります。

4|「姿勢が悪いから」は、証明されていない

スマホやデスクワークと肩こりの関連は、たしかにあります。スマホの使いすぎがある人は、首の痛みを持つ割合が2.3倍というメタ分析があります。ただ、これらの研究はすべて「後から振り返って調べた」もので、姿勢が原因で痛みが起きたのか、痛みがあるから姿勢が変わったのかは分かりません。

「テキストネック」(スマホ首)と首の痛みの因果関係を、因果関係の判定基準に照らして調べたレビューでは、基準を満たす論文はひとつもありませんでした。18〜21歳の150人を調べた研究では、スマホを見るときの首の姿勢と首の痛みに関連はありませんでした。

さらに、日本理学療法士協会のガイドラインは、姿勢の改善を目的とした運動療法について「行わないことを条件付きで推奨」としています。姿勢を「正す」ことより、同じ姿勢を続けないこと、筋力をつけること、ストレスを減らすことのほうに、根拠があります。

肩の痛みのイメージ

もうひとつ、見落とされがちなのが、こころの要因です。首の痛みの世界的な疫学をまとめた総説では、長期のストレス、周囲の支えの少なさ、不安、うつが、確立したリスク因子として挙げられています。オフィスワーカーを追跡した研究でも、首の痛みの発症と関連していたのは、職場環境への満足度の低さや、自分で感じる筋肉の緊張の強さでした。「肩がこる」とき、体だけでなく、生活の負担の全体を見直す必要があるのは、そのためです。

5|産後のお母さんの7割に、首・肩の痛み

日本の産後1か月健診を受けた308人を調べた研究では、73.1%に首・肩の痛みがありました。そのうち4分の1は、産後に始まったものでした。痛みと関連していたのは、1回の授乳時間の長さ、疲労、妊娠中の貧血、月経前症候群の既往でした。

この研究が示しているのは、産後の肩こりが「抱っこの姿勢」だけの問題ではない、ということです。授乳に時間がかかる、眠れていない、疲れがたまっている——そうした全体の負担が、肩に出ています。保健室では、抱っこや授乳の姿勢を一緒に見直すと同時に、休める時間をどう作るかも、一緒に考えます。

6|「肩こり」として様子を見てはいけないとき

ほとんどの肩こりは、危険なものではありません。ただし、次の症状があるときは、肩こりと決めつけず、医療機関を受診してください。

  • 手足のしびれ、脱力、歩きにくさがある
  • 発熱を伴う
  • 夜間や安静時にも続く痛み、体重減少を伴う
  • けがのあとに始まった痛み
  • 突然の激しい痛み、めまい、物が二重に見えるなどの視覚の異常

保健室でも、施術の前にこれらを必ず確認しています。該当するときは、施術ではなく受診をお勧めします。

マットの上でエクササイズをする女性

7|保健室でできること

理学療法士は、首・肩の動きと筋力を評価し、その方に合った「1日2分」の運動を一緒に決めます。産後の方は、授乳・抱っこの姿勢と、1日の負担の全体を一緒に見直します。流山本院では、お子さまをお預かりしている間に、落ち着いて体を診ることができます。

「マッサージに通っているけれど、戻ってしまう」という方こそ、一度、動かし方を一緒に確認してみてください。

よくある質問

Q. 肩こりにマッサージは効かないのですか?

A. 研究では、偽の施術と比べて痛みの差は証明されていません。ただ、量が多い場合には差が出た分析もあります。気持ちよさや短期的な楽さは大切にしつつ、自分で動かす運動と組み合わせることをお勧めします。

Q. 1日2分の運動とは、具体的に何をしますか?

A. 研究ではゴムチューブを使った首・肩の抵抗運動でした。腕を横に上げる、肩甲骨を寄せるなどの動きを、少し負荷をかけて行います。やり方は体の状態によって変わるので、理学療法士に確認してから始めると安全です。

Q. 姿勢を直せば肩こりは治りますか?

A. 姿勢と肩こりには関連がありますが、姿勢が原因と証明されたわけではありません。姿勢を「正す」ことより、同じ姿勢を長く続けないことと、筋力をつけることに根拠があります。

Q. 産後の肩こりは、抱っこのせいですか?

A. 日本の研究では、授乳時間の長さや疲労、妊娠中の貧血との関連が示されました。抱っこの姿勢だけでなく、休息や体調の全体を見直すことが大切です。

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本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。


参考文献・出典

  1. 厚生労働省. 2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況 III 世帯員の健康状況(図17). https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/dl/04.pdf
  2. 厚生労働省. 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 III 世帯員の健康状況. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/04.pdf
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