【毎日コラム】防ぐ方法が分かっているがんがある。HPVワクチンと子宮頸がん検診のいま

子宮頸がんは、原因と、防ぐ方法が分かっている、数少ないがんのひとつです。原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染。防ぐ方法は、ワクチンと検診の2つです。
けれども日本では、この2つがどちらも、十分に行きわたっていません。小学校高学年から高校生の娘さんがいる方、20〜30代で「ワクチンを受けそびれた世代」にあたる方、そして検診から足が遠のいている方。今日の内容は、そのどなたにも関わります。
ワクチンについては、効果と安全性の両方について、研究の結果をそのままお伝えします。
1|子宮頸がんは、若い世代のがん
国立がん研究センターの統計によると、日本で子宮頸がんと診断される人は年間10,457人(2023年)、亡くなる人は2,751人(2024年)です。
多くのがんは高齢になるほど増えますが、子宮頸がんは違います。20代から増え始めます。厚生労働省によると、30代までにがんの治療で子宮を失う人が、年間およそ900人います。妊娠・出産を考える年代、子育てのただ中の年代を襲うがんです。
がんになる手前の段階(前がん病変)で見つかれば、子宮の入り口の一部を切り取る手術(円錐切除)で治療でき、子宮を残せます。ただし、この手術を受けたあとの妊娠では、早産がやや増えることが分かっています(10.7%と5.4%)。「早く見つければ治る」のは確かですが、見つかる前に防げるなら、それがいちばんです。
2|HPVワクチン:いまの制度
HPVは、性的な接触によって感染する、ごくありふれたウイルスです。性交の経験がある女性の多くが、一生に一度は感染するとされています。ほとんどは自然に消えますが、一部で感染が長く続き、数年から十数年かけて、がんへ進むことがあります。
ワクチンは、この感染そのものを防ぎます。2026年11月現在の制度は、次のとおりです。
- 対象:小学校6年生から高校1年生に相当する年齢の女の子。公費(無料)で受けられます
- ワクチンの種類:2026年度から、公費で受けられるのは9価ワクチン(シルガード9)です。子宮頸がんの原因となるHPVの80〜90%を防ぎます
- 回数:1回目を15歳になる前に受ければ、合計2回(5か月以上あけて)。15歳以上で始める場合は、合計3回
高校1年生の年度の終わりが、公費で受けられる期限です。3回の接種には約6か月かかりますので、高校1年生の方は、遅くとも秋までに1回目を始める必要があります。15歳になる前に始めれば2回で済むことも、覚えておいてください。
積極的な勧奨が止まっていた時期に対象年齢を過ぎた方のための「キャッチアップ接種」は、2026年3月末で終了しました。現在、対象年齢を過ぎた方が接種を希望する場合は、自費(任意接種)になります。
3|効果:がんそのものを減らすことが確かめられた
ワクチンが導入された当初、確かめられていたのは、「感染」と「前がん病変」を減らす効果でした。その後、接種が始まった世代が大人になり、「がんそのもの」が減ることが、複数の国で確かめられています。
- スウェーデン(Lei ら、N Engl J Med 2020年、約167万人):17歳になる前に接種した女性では、子宮頸がんの発生が88%少ない。17〜30歳で接種した女性でも、53%少ない
- イングランド(Falcaro ら、Lancet 2021年):12〜13歳で接種した世代で87%、14〜16歳で62%、16〜18歳で34%少ない。前がん病変(CIN3)は、12〜13歳で接種した世代で97%少ない
- スコットランド(Palmer ら、2024年):12〜13歳で接種した女性から、子宮頸がんは1例も出ていない
どの研究でも共通しているのは、「若いうちに接種するほど、効果が大きい」ということです。日本産科婦人科学会も、初めての性交渉を経験する前に接種することがもっとも効果的、としています。小学校6年生から高校1年生という対象年齢には、そういう理由があります。
日本のデータもあります。全国の研究(Ikeda ら、2021年)では、ワクチンを接種した女性で、前がん病変(CIN2以上)が74.8%少なくなっていました。20代の検診データを用いた研究でも、同じ方向の結果が出ています。日本で「がんそのもの」が減ったことを示すデータは、まだ予備的な段階です。接種率が低い時期が長かったため、結果が出るまでに時間がかかっています。
4|安全性:分かっていること
日本では、2013年4月に定期接種が始まった直後から、接種後に体の広い範囲の痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動などの症状が報告されました。同年6月、国は積極的な勧奨を差し控え、接種を受ける人は大きく減りました。
その後、症状とワクチンの関係を調べる調査が行われました。
名古屋スタディ(Suzuki・Hosono、2018年):名古屋市が、対象となる年代の女性に調査票を送り、約3万人から回答を得たものです。接種した人としていない人で、報告されていた24の症状の起こりやすさを比べたところ、どの症状も、接種した人で有意に多いということはありませんでした。
正確を期すために付け加えると、この調査では、「月経の量の異常」などで医療機関を受診した人の割合は、接種した人でやや高くなっていました。「まったく差がなかった」と言い切るより、「懸念されていた重い症状との関連は見られなかった」とお伝えするのが正確です。
世界保健機関(WHO)のワクチン安全性の委員会は2017年、世界で2億7千万回以上の接種実績をふまえ、HPVワクチンは「きわめて安全」であり、懸念された症状との因果関係を示す証拠はない、としています。
これらをふまえて、国は2021年11月に勧奨の差し控えを終了し、2022年4月から、対象者への個別のお知らせを再開しました。
ワクチンですから、副反応はあります。接種した部位の痛み、腫れ、赤みは、多くの人に起こります。注射の痛みや緊張で、接種の直後に気を失うこと(血管迷走神経反射)があるため、接種後しばらくは座って様子を見ます。
接種後に気になる症状が続く場合に備えて、各都道府県に、協力医療機関と相談窓口が設けられています。症状があったときに、ひとりで抱えこまずに済む体制が整えられたことも、再開の背景にあります。
不安があるのは、当然のことです。接種を迷っている方は、かかりつけの小児科や婦人科で、納得がいくまで質問してください。お子さん本人が、何のためのワクチンかを理解していることも大切です。
5|「受けていない世代」が、いま20代にいる

厚生労働省の資料(2024年度上半期までの累積、速報・推計値)によると、1回以上接種した人の割合は、1998年度生まれで86.9%だったのに対し、2000年度生まれでは40.6%、2002年度生まれでは36.8%です。2000年度以降に生まれた世代では、キャッチアップ接種を経ても、半数以上が受けていません。
最近の対象年齢の接種率も、まだ高くはありません。定期接種の年間の実施率は、令和4年度8.4%、5年度12.3%、6年度13.9%(速報値)と、少しずつ上がっている段階です。
ワクチンを受けていない、あるいは受けたかどうか分からない20代の方へ。あなたにとって、いちばん大切なのは、検診です。

6|検診:20歳から、2年に1回
子宮頸がん検診は、子宮の入り口の細胞をブラシなどでこすり取って調べる検査です。数分で終わります。
- 対象:20歳以上の女性
- 間隔:2年に1回(細胞診)
- 費用:お住まいの市区町村の検診なら、無料または少額。職場の健診にふくまれていることもあります
2024年からは、新しい方法も加わりました。30〜60歳の女性に、HPVに感染しているかどうかを調べる検査(HPV検査単独法)を、5年に1回行う方法です。体制が整った自治体から選べることになっていますが、厚生労働省の調査(2026年5月)では、導入済みの自治体はまだごくわずかです。当面は、多くの方にとって「2年に1回の細胞診」が標準です。
検診の受診率は、2025年の国民生活基礎調査で46.1%(20〜69歳、過去2年間)。半数以上の方が、受けていません。
受けない理由として、「恥ずかしい」「痛そう」「時間がない」「症状がないから」という声をよく伺います。けれども、子宮頸がんは、前がん病変や初期の段階では、症状がありません。症状が出てからでは、進んでいることが多いのです。「症状がないときに受ける」ことに、意味があります。
7|ワクチンを受けても、検診は必要
ワクチンを受けた方も、20歳になったら検診を受けてください。厚生労働省も、そう呼びかけています。理由は2つあります。
- ワクチンは、がんの原因になるHPVのすべての型を防げるわけではない(9価で80〜90%)
- 接種する前にすでに感染していたHPVには、効果がない
ワクチンで感染を防ぎ、防ぎきれなかったものを検診で見つける。この2つがそろって、子宮頸がんは防げます。世界保健機関は、15歳までに女の子の90%がワクチンを受け、70%の女性が検診を受け、病変が見つかった人の90%が治療を受ける、という目標を2030年までに達成して、子宮頸がんを「排除」することをめざしています。
8|よくあるご質問
性交の経験があっても、ワクチンの意味はありますか? あります。スウェーデンの研究では、17〜30歳で接種した女性でも、子宮頸がんが53%少なくなっていました。ただし、効果は若いうちに受けた場合より小さくなります。
妊娠中・授乳中は受けられますか? 妊娠中の方、授乳中の方は、厚生労働省の案内で「接種に注意が必要な方」とされています。接種の前に、医師に相談してください。
妊娠中・産後の検診は? 妊婦健診では、妊娠初期に子宮頸がん検診が行われることが一般的です。最後に検診を受けてから2年以上たっている方は、産後の生活が落ち着いたら、次の検診の予定を入れておきましょう。出産や授乳の時期は、検診の間隔があきやすい時期です。
男の子は? HPVは、男性にも肛門がんや尖圭コンジローマなどを起こします。日本でも男性への接種が承認されていますが、現在は任意接種(自費)です。定期接種にするかどうかは、国の審議会で検討が続いています。独自に費用を助成している自治体もあります。
9|保健室でお手伝いできること
女性とこどもの保健室は、ワクチンの接種や検診を行う施設ではありません。
けれども、産後ケアや体のご相談でいらした方に、「最後に子宮頸がん検診を受けたのは、いつですか」とお聞きすると、「妊娠中に受けたきり」「もう何年も受けていない」というお答えが少なくありません。自分のことは、どうしても後回しになります。
- 検診の受け方、お住まいの自治体の検診の調べ方のご案内
- 「内診が苦手」「痛みがこわい」という方のお話を伺うこと。骨盤底の緊張が強い方には、力の抜き方の練習も
- 娘さんへのワクチンについて、迷っている保護者の方のお話を伺い、相談先をご案内すること
- 託児を利用して、ご自分の体に向き合う時間をつくるお手伝い
10|今日から持ち帰っていただきたい5つのこと
- 子宮頸がんは、日本で年間約1万人がかかり、約2,800人が亡くなっています。20代から増え始めるがんです。
- HPVワクチンは、12〜13歳で接種した世代の子宮頸がんを87%減らしました。若いうちに受けるほど効果的です。
- 公費で受けられるのは、小学校6年生から高校1年生まで。15歳になる前に始めれば、2回で済みます。
- 大規模な調査で、懸念された症状とワクチンの関連は見られていません。不安な点は、かかりつけ医に質問を。
- ワクチンを受けた方も受けていない方も、20歳になったら2年に1回の検診を。
明日は文化の日、祝日です。カレンダーを見ながら、ご自分の検診と、お子さんの接種の予定を、確かめてみませんか。
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「病院に行くほどではないけれど、誰かに診てもらいたい」——その段階でのご相談を、いちばん歓迎しています。
本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。
参考文献・出典
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計(子宮頸部)」.
- 厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症〜子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン〜」/リーフレット(詳細版)/HPVワクチンに関するQ&A.
- Kyrgiou M, et al. Adverse obstetric outcomes after local treatment for cervical preinvasive and early invasive disease according to cone depth: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2016;354:i3633.
- 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 資料(令和7年11月19日).
- Lei J, et al. HPV vaccination and the risk of invasive cervical cancer. N Engl J Med. 2020;383(14):1340-1348.
- Falcaro M, et al. The effects of the national HPV vaccination programme in England, UK, on cervical cancer and grade 3 cervical intraepithelial neoplasia incidence: a register-based observational study. Lancet. 2021;398(10316):2084-2092.
- Palmer TJ, et al. Invasive cervical cancer incidence following bivalent human papillomavirus vaccination: a population-based observational study of age at immunization, dose, and deprivation. J Natl Cancer Inst. 2024;116(6):857-865.
- 日本産科婦人科学会「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」.
- Ikeda S, et al. Human papillomavirus vaccine to prevent cervical intraepithelial neoplasia in Japan: a nationwide case-control study. Cancer Sci. 2021;112(2):839-846.
- Konno R, et al. Vaccine. 2018;36(52):7913-7915/Shiko Y, et al. BMC Infect Dis. 2020;20(1):808/Onuki M, et al. Cancer Sci. 2023;114(11):4426-4432.
- Suzuki S, Hosono A. No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: results of the Nagoya study. Papillomavirus Res. 2018;5:96-103.
- World Health Organization. Global Advisory Committee on Vaccine Safety: Safety update of HPV vaccines. 2017.
- 厚生労働省 HPVワクチンに関する自治体向け説明会資料(令和6年度)/定期の予防接種実施率.
- 厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」/がん検診のあり方に関する検討会 資料(令和8年7月16日).
- 厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」.
- World Health Organization. Cervical Cancer Elimination Initiative.
- 厚生科学審議会 ワクチン評価に関する小委員会 資料(令和8年7月22日).

