【毎日コラム】「砂糖でこどもが興奮する」は本当か。ハロウィンに考える、お菓子との付き合い方

今日はハロウィン。園や地域のイベントで、お菓子をたくさんもらって帰ってくるお子さんもいるでしょう。
「甘いものを食べると、こどもがハイになって手がつけられない」。そう感じたことのある方は多いと思います。英語圏では「シュガーハイ」という言葉まであります。
けれども、これを確かめた研究の結果は、意外なものでした。今日は、こどもと砂糖について、行動への影響、量の目安、そして「禁止」の逆効果まで、研究をたどります。最後に、ハロウィンで本当に気をつけたい安全のことをお伝えします。
1|「砂糖で興奮する」を確かめた研究
1995年、米国の医学誌 JAMA に、ひとつのメタ分析が掲載されました(Wolraich ら)。こどもに砂糖を与えた場合と、砂糖に見せかけた甘味料(偽物)を与えた場合を、こども本人にも親にも研究者にもどちらか分からないようにして比べた、23の研究をまとめたものです。
結果は、行動にも、考える力にも、砂糖の影響は認められない、というものでした。調べた14の項目すべてで、差は確認されませんでした。
その前年、同じ研究者たちが行った試験(N Engl J Med、1994年)は、さらに念入りです。親が「うちの子は砂糖に敏感だ」と言う6〜10歳のこどもたちと、未就学児を対象に、砂糖の多い食事、人工甘味料の食事を3週間ずつ、どれか分からないようにして続けてもらいました。行動や学習について39の項目を調べましたが、「砂糖に敏感」とされたこどもたちでも、食事による差はひとつもありませんでした。
ただし、研究者は、ごく小さな影響や、一部の子への影響までは否定できない、とも述べています。「絶対に影響がない」と証明されたわけではありません。それでも、多くの親が感じているほどの大きな変化は、厳密に調べると見つからないのです。
2|では、なぜ「興奮している」ように見えるのか
ヒントになる実験があります(Hoover・Milich、1994年)。
親が「砂糖に敏感」と考えている5〜7歳の男の子35人に、全員、砂糖の入っていない飲みものを飲んでもらいました。そのうえで、半分の母親には「お子さんは砂糖をたくさんとりました」と伝え、残りの母親には「砂糖は入っていません」と伝えました。
すると、「砂糖をとった」と伝えられた母親は、わが子を、より落ち着きがないと評価しました。さらに、こどものそばにつきっきりになり、注意したり、口を出したりすることが増えていました。
こどもは同じなのに、大人の見る目が変わったのです。小さな研究ではありますが、示唆に富んでいます。
考えてみれば、こどもがお菓子をたくさん食べるのは、誕生会、お祭り、ハロウィン、祖父母の家といった、特別な場面です。友だちがいて、いつもと違う場所で、夜ふかしもしている。興奮の原因は、砂糖ではなく、その場面そのものかもしれません。
「甘いものを食べたから」と身構えるよりも、「楽しくて興奮しているんだな」「疲れて眠いんだな」と受けとめるほうが、実際に近そうです。
3|だからといって、砂糖はいくらでもよい、ではない
行動への影響が確認されないからといって、砂糖をいくらとってもよい、ということにはなりません。むし歯と肥満への影響は、はっきりしています。
世界保健機関(WHO)は2015年のガイドラインで、「遊離糖類」を、1日にとるエネルギーの10%未満にすることを強く推奨し、5%未満にできれば、さらに良いとしています。主な根拠は、むし歯と体重です。
遊離糖類とは、食品や飲みものに加えられた砂糖に、はちみつ、シロップ、果汁にふくまれる糖を合わせたものです。果物をそのまま食べるときの糖や、牛乳にふくまれる糖は、ふくまれません。
こどもの場合、どのくらいの量になるでしょうか。WHOはこどもについてグラム数を示していないため、日本人の食事摂取基準(2025年版)のエネルギーの目安から計算してみると、次のようになります。
- 1〜2歳:10%で約23g、5%で約11g
- 3〜5歳:10%で約32g、5%で約16g
- 6〜7歳:10%で約36〜39g、5%で約18〜19g
- 8〜9歳:10%で約43〜46g、5%で約21〜23g
米国心臓協会は、2〜18歳のこどもについて、食品に加えられた砂糖を1日25g以下に、2歳未満では避けることを勧めています。
なお、日本人の食事摂取基準は、糖類について基準値を設けていません。日本の食品成分表に、加えられた砂糖の量のデータが十分にないため、設定が見送られています。
4|日本のこどもは、どのくらいとっているか
日本のこどもを対象にした研究(Fujiwara ら)があります。
- 2016年の国民健康・栄養調査のデータを用いた分析では、2〜19歳の遊離糖類の摂取は、エネルギーの約6%(男子5.8%、女子6.2%)でした
- 別の調査では、10%を超えている子は、1歳半から3歳未満の幼児で約2割、ほかの年齢では3〜13%でした。一方、5%を超えている子は、どの年齢でも半数以上でした
- 遊離糖類の多い子ほど、ビタミンやミネラルの摂取が少ない傾向がありました
- 糖類の主な供給源は、幼児では乳製品、それより上の年齢では菓子類でした
日本のこどもの多くは、WHOの「10%未満」には収まっています。「日本のこどもは砂糖漬け」というほどではありません。ただ、「できれば5%未満」には、半数以上が届いていません。
5|いちばん効果があるのは、「飲みもの」を見直すこと
砂糖の中でも、とくに影響がはっきりしているのが、甘い飲みものです。メタ分析では、甘い飲みものが1日1杯増えるごとに、こどものBMIがわずかに上がること、そして比較試験で、甘い飲みものを減らすと、体重の増え方が抑えられることが示されています。
飲みものは、かまずに短い時間で入ってしまうため、量が増えやすいのです。清涼飲料を買うときは、栄養成分表示の「炭水化物」や「糖類」の量を、一度見てみてください。
果汁100%のジュースも、遊離糖類にふくまれます。米国小児科学会は、次のように勧めています。
- 1歳未満:果汁は与えない
- 1〜3歳:1日約120mLまで
- 4〜6歳:1日120〜180mLまで
- 7〜18歳:1日約240mLまで
- 哺乳びんやストローつきのマグで持ち歩かせない。寝る前に与えない
果物は、ジュースではなく、そのまま食べるのがおすすめです。ふだんの飲みものは、水か麦茶、牛乳で。お菓子を細かく管理するより、こちらのほうが、ずっと取り組みやすく、効果も確かです。
「砂糖の代わりに人工甘味料を」と考える方もいるかもしれません。WHOは2023年、体重管理を目的として、砂糖以外の甘味料を使うことは勧めない、という指針を出しています。長期的な体重への利益が確認されなかったためです。甘味料に置きかえるより、甘い味そのものに頼る回数を減らしていく、という考え方です。

6|「禁止」は、逆効果になりうる
では、お菓子は家に置かない、絶対に食べさせない、とするのがよいのでしょうか。
米国の研究(Fisher・Birch、1999年)では、こどもが好きなお菓子を、見えるけれど食べてはいけない状態にしておくと、そのお菓子への注目と「食べたい」気持ちが高まり、食べてよい時間になったときに、より多く選んで食べました。
オランダの研究(Jansen ら)でも、果物でもお菓子でも、「食べてはいけない」とされたグループのこどもは、解禁されたあとに、それをより多く食べました。さらに、家庭でお菓子の制限が「とても厳しい」子と、「ほとんどない」子は、どちらも、制限が中くらいの子より多く食べていました。
ごほうびとして使うことにも、注意が必要です。約3,600人を追跡したオランダの研究では、4歳のときに食べものをごほうびに使われていた子は、9歳のときに、気持ちが動いたときに食べる傾向や、偏食が多くなっていました(体重との関連はありませんでした)。「野菜を食べたら、デザートをあげる」というやり方は、野菜を「我慢するもの」、デザートを「価値の高いもの」にしてしまいます。
これらは少人数・短期間の実験や、関連を示した研究で、「禁止すると太る」と証明したものではありません。それでも、方向は一致しています。
- 完全に禁止するより、「いつ・どのくらい」の枠を決める
- お菓子を、ごほうびや取引の材料にしない。泣きやませるためにも使わない
- 食べるときは、座って、味わって、楽しく
- 「悪い食べもの」と呼ばない
こどもが甘いものを好きなのは、生まれつきです。研究によると、こどもは大人よりも強い甘さを好み、その好みは思春期の半ばから後半にかけて、大人の水準に落ち着いていきます。わがままでも、しつけの失敗でもありません。
7|ハロウィンのお菓子、どうする?
以上をふまえた、ひとつの提案です。
- もらったお菓子は、家に帰ってから、大人と一緒に全部広げて確かめる(安全の確認は次の項目で)
- 今日は、特別な日。好きなものをいくつか選んで、楽しく食べる
- 残りは、こどもと相談して、「1日にいくつ」「おやつの時間に」と決める。隠したり、こっそり捨てたりしない
- 食べたあとは、歯みがきを。だらだら食べ続けないことが、むし歯予防のいちばんのポイントです
1日だけ砂糖が多くなっても、健康への影響はありません。問題になるのは、毎日の習慣です。
8|本当に気をつけたいのは、「安全」

窒息・誤嚥:消費者庁によると、2014年からの6年間に、食品による窒息で亡くなった14歳以下のこどもは80人。そのうち73人が5歳以下でした。原因が分かった中では、お菓子類(ゼリー、ドーナツ、あめなど)がもっとも多くなっています。
- 硬い豆やナッツ類は、5歳以下には食べさせない。小さく砕いても、気管に入ると肺炎などを起こす危険があります。ナッツ入りのチョコレートやクッキーにも注意
- あめ、ラムネ、グミ、小さなチョコレート、球形のお菓子は、のどに詰まりやすい形です。幼児には、年齢に合ったものを選ぶ
- 歩きながら、走りながら、遊びながら、寝ころんで、車の中で、食べさせない。座って、落ち着いて食べる
- ぶどうやミニトマトは、4歳以下では4つに切る
はちみつ:1歳未満の赤ちゃんには、はちみつを与えないでください。乳児ボツリヌス症を起こすことがあり、2017年には国内で死亡例も報告されています。原因となる菌は、ふつうの加熱では死にません。はちみつ入りのお菓子や飲みものも同じです。きょうだいがもらったお菓子を、赤ちゃんに分けないよう気をつけてください。
食物アレルギー:もらったお菓子は、原材料の表示を確かめてから。2026年4月から、表示が義務づけられている品目にカシューナッツが加わり、9品目(えび、かに、くるみ、カシューナッツ、小麦、そば、卵、乳、落花生)になりました。ただし、新しい表示への切り替えには猶予期間があり、また表示の義務があるのは、容器に包装された加工食品です。手作りのお菓子や、小分けにされて表示のないものは、アレルギーのあるお子さんには食べさせないのが安全です。
お菓子を配る側になるときは、アレルギーのある子も楽しめるよう、シールや小さな文房具など、食べもの以外のものを一緒に用意しておくのも、すてきな工夫です。
夜道:米国の研究では、ハロウィンの夕方は、歩行者の死亡事故がほかの日より43%多く、とくに4〜8歳で大きく増えていました。日本での同様のデータは見つかりませんでしたが、日の入りが早くなる季節です。暗い色の仮装には、反射材やライトを。マスクやかぶりもので、視界が狭くなっていないかも確かめてください。
9|保健室でお手伝いできること
女性とこどもの保健室では、「食べること」を、体の発達の面からお手伝いしています。
- 食べるときの姿勢、かむ・飲みこむ動きの確認
- 「丸のみする」「よくむせる」「食べものを口にためる」といったご相談
- おやつや食事をめぐる、親子のやりとりのお悩みを伺うこと
- 保護者の方ご自身の、疲れと甘いものとの付き合い方のご相談
食物アレルギーの診断や、栄養の専門的な指導が必要な場合は、小児科や管理栄養士をご案内します。
10|今日から持ち帰っていただきたい5つのこと
- 「砂糖でこどもが興奮する」ことは、厳密な比較試験では確認されていません。興奮のもとは、特別な場面そのものかもしれません。
- それでも、砂糖はむし歯と肥満に関わります。目安は、1日のエネルギーの10%未満、できれば5%未満。
- いちばん効果があるのは、ふだんの飲みものを水・お茶・牛乳にすること。
- お菓子の完全な禁止や、ごほうびとしての利用は、かえって執着を強めることがあります。枠を決めて、楽しく。
- ナッツは5歳以下に与えない、はちみつは1歳未満に与えない、座って食べる。量よりも先に、安全を。
ハッピーハロウィン。今夜は、楽しい思い出のほうを、たくさん持ち帰ってください。
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「病院に行くほどではないけれど、誰かに診てもらいたい」——その段階でのご相談を、いちばん歓迎しています。
本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。
参考文献・出典
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- Wolraich ML, et al. Effects of diets high in sucrose or aspartame on the behavior and cognitive performance of children. N Engl J Med. 1994;330(5):301-307.
- Hoover DW, Milich R. Effects of sugar ingestion expectancies on mother-child interactions. J Abnorm Child Psychol. 1994;22(4):501-515.
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- 消費者庁「食品による子どもの窒息・誤嚥事故に注意!」2021年1月20日.
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- 厚生労働省「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。」.
- 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」(2026年4月1日 改正).
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