子育て

【毎日コラム】こどものむし歯は、30年で5分の1以下に。フッ素・仕上げみがき・食器の共有、いまの考え方

明日はハロウィン。お菓子をもらう機会が増えるこの時期、こどもの歯のことが気になる方も多いのではないでしょうか。

こどものむし歯は、この30年で劇的に減りました。同時に、予防の考え方も変わっています。「フッ素入りの歯みがき粉は何歳から?」「うがいはしっかり?」「大人と同じスプーンはだめ?」。保護者の世代が教わったことと、いまの推奨が違う点がいくつもあります。

今日は、こどもの歯について、最新の学会の推奨と研究を整理します。お菓子と砂糖については、明日のコラムでお伝えします。

1|むし歯は、大きく減った

厚生労働省の資料によると、3歳児でむし歯のある子の割合は、平成6年(1994年)には48.4%でした。それが令和4年度には8.6%。30年たらずで、5分の1以下になっています。

12歳の永久歯のむし歯の本数(1人あたりの平均)も、平成6年の4.00本から、令和4年度には0.56本になりました。令和7年度の学校保健統計では、むし歯のあるこどもの割合が、幼稚園から高校まですべての学校段階で過去最少となっています。

ただし、全員が同じように減ったわけではありません。

  • 3歳の時点で4本以上のむし歯がある子が、約2%います。むし歯は、一部の子に集中する傾向があります
  • 地域による差があります。厚生労働省の統計表から都道府県別に計算すると、3歳児のむし歯の割合は、少ない県と多い県で約3倍の開きがあります
  • 家庭の状況による差もあります。日本の約3万5千人を追った研究では、親の学歴による差は、2歳半から5歳半にかけて広がっていました

むし歯は、「親がちゃんとしていないから」できるものではありません。住んでいる地域や家庭の状況に左右される、社会的な側面をもつ病気です。だからこそ、個人の努力だけに頼らない予防法が重視されるようになっています。その中心が、フッ化物(フッ素)です。

2|フッ化物配合の歯みがき剤:2023年の新しい推奨

2023年1月、日本口腔衛生学会、日本小児歯科学会など4つの学会が、フッ化物配合歯みがき剤の使い方について、合同で新しい推奨を出しました。

フッ化物配合歯みがき剤の使い方。歯が生えてから2歳までは1000ppmを米粒程度、3〜5歳は1000ppmをグリーンピース程度、6歳以上は1500ppmを歯ブラシ全体に
  • 歯が生えてから2歳まで:フッ化物濃度1000ppm(日本の製品では900〜1000ppm)を、米粒程度(1〜2mm)
  • 3〜5歳:同じく1000ppmを、グリーンピース程度(5mm)
  • 6歳から大人:1500ppm(日本の製品では1400〜1500ppm)を、歯ブラシ全体(1.5〜2cm)

以前の推奨から変わった点は、主に3つです。

①歯が生えたら、すぐに使う。「うがいができるようになってから」ではありません。最初の歯が生えたときから、ごく少量を使います。うがいができない0〜2歳は、みがいたあとにガーゼなどでふき取るだけでもかまいません。

②濃度が上がった。以前は、小さい子には500ppmの低濃度のものが勧められていました。いまは、乳幼児でも1000ppmを、量を少なくして使います。こども用として売られている製品には、いまも500ppm前後のものがあります。パッケージの「フッ素濃度」の表示を確かめてみてください。

③うがいは、少量の水で1回だけ。何度もしっかりゆすぐと、せっかくのフッ化物が流れてしまいます。少量の水で、1回だけ。そして、寝る前をふくめて1日2回みがきます。

効果の根拠は、十分にあります。コクランレビュー(70試験、約4万2千人)によると、フッ化物配合の歯みがき剤は、むし歯を24%減らします。濃度が高いほうが、効果もやや大きくなります。

フッ化物については、不安を感じる方もいらっしゃいます。フッ化物は、歯みがき剤として適切な量を使うかぎり、安全とされています。気をつけたいのは、歯がつくられる時期に多くとりすぎると、歯に白い斑点ができること(歯のフッ素症)です。そのために、年齢ごとの「量」が細かく決められています。米粒程度、グリーンピース程度という量を守ること、そして歯みがき剤をこどもの手の届かないところに置き、食べたりなめたりさせないこと。この2点が大切です。

3|歯科で受けられる予防

  • フッ化物の塗布:歯科医院や保健センターで、高い濃度のフッ化物を歯に塗ります。コクランレビューでは、むし歯を乳歯で37%、永久歯で43%減らすとされています
  • シーラント:奥歯の溝を、樹脂でふさぐ処置です。コクランレビューでは、6歳臼歯(第一大臼歯)のむし歯を大きく減らすことが示されています
  • フッ化物洗口:フッ化物の入った液でぶくぶくうがいをする方法で、園や学校で集団で行っている地域があります。コクランレビューでは、永久歯のむし歯を27%減らすとされています。厚生労働省は2022年、4歳から14歳までの時期に行うのがもっとも効果的で、集団で行うことが健康格差を縮めることにもつながる、という考え方を示しました。実施状況は地域によって大きく違います

6歳ごろに生えてくる6歳臼歯は、乳歯の奥に、気づかないうちに顔を出します。生えたばかりの歯は質が弱く、背が低くて歯ブラシが届きにくいため、もっともむし歯になりやすい歯です。5歳を過ぎたら、いちばん奥をときどきのぞいてみてください。生えてきたら、歯科でフッ化物塗布とシーラントについて相談するとよい時期です。

4|「むし歯菌がうつるから、食器は別に」は必要か

「大人が使ったスプーンで食べさせてはいけない」「ふうふうして冷ますのもだめ」。そう教わって、神経をつかってきた方も多いと思います。

2023年8月、日本口腔衛生学会は、この点について声明を出しました。要点は、次のとおりです。

  • 食器の共有を避けることで、むし歯を予防できるという科学的根拠は、必ずしも強いものではない
  • 親の口の中の細菌は、食器の共有をしていなくても、生後4か月の時点ですでにこどもに伝わっている。日々のふれあいの中で伝わるもので、気にしすぎる必要はない
  • むし歯予防のためには、砂糖を控えること、仕上げみがき、フッ化物の利用が大切

根拠のひとつは、日本の3歳児約3,000人の研究です。食器を分けるなどの「うつさないための行動」をしていた家庭と、していなかった家庭で、むし歯の頻度に差はありませんでした。

反対の結果もあります。北海道の研究では、食器の共有がむし歯の発生と関連していました。ですから、「まったく関係ない」と言い切れるわけではありません。それでも、スプーンを共有してしまったことを悔やんだり、祖父母の方を責めたりするほどのことではない、というのが現在の整理です。同じ労力をかけるなら、フッ化物と仕上げみがきに。

5|母乳・夜間授乳とむし歯

「1歳を過ぎたら、むし歯になるから断乳を」と言われて、悩む方がいます。

63の研究をまとめた分析(Tham ら、2015年)では、次のような結果でした。

  • 1歳までは、母乳で育った期間が長い子のほうが、むし歯は少ない
  • 1歳を過ぎても母乳を続けている子は、むし歯が約2倍多い
  • 1歳を過ぎて、夜間や頻回の授乳がある子では、さらに多い

ただし、研究者自身が、研究ごとのばらつきが大きく、甘い飲食物や歯みがきの影響を切り分けられていない、と明記しています。

日本の小児科と小児歯科の合同の委員会は、母乳そのものは、むし歯の直接の原因ではない、としています。歯の表面に歯垢や食べかすが残っているところに母乳が加わると、リスクが高くなる、という考え方です。

つまり、大切なのは授乳をやめることではなく、歯をきれいにしておくことです。前歯が生えたら口のケアを始める。離乳食が進んだら、寝る前の歯みがきをていねいに。1歳を過ぎても授乳を続ける場合は、一度、小児歯科で見てもらっておくと安心です。授乳をいつまで続けるかは、歯だけで決めることではありません。

6|おやつと飲みもの

日本の3歳児約1,800人の研究では、夕食のあとに甘いものを食べる習慣、おやつの時間が決まっていないこと、チョコレート、ガム、イオン飲料を頻繁にとることが、むし歯と関連していました。

むし歯は、砂糖の「量」だけでなく、口の中に砂糖がある「時間の長さ」で進みます。少しずつ、だらだら食べ続けるのが、いちばんよくありません。

  • おやつは、時間と量を決めて
  • 夕食のあと、寝る前には、甘いものをとらない
  • ふだんの水分補給は、水かお茶で
  • イオン飲料・スポーツドリンクを、水の代わりにしない。下痢や嘔吐がおさまったら、やめる。寝る前や、寝ながら飲ませない
おやつを食べるこどもと母親

7|仕上げみがきと、のど突き事故

「仕上げみがきは何歳まで?」とよく聞かれます。実は、「何歳まで」を裏づける研究は見当たりません。合同委員会は、ひとりでみがけるようになるのは学童期までにできればよく、6歳臼歯が生えるころは、大人が確認し手伝うこと、としています。小学校の低学年くらいまでは、夜だけでも仕上げをしてあげるのが現実的です。

そして、ぜひ知っておいていただきたいのが、歯ブラシによる事故です。消費者庁によると、歯ブラシをくわえたまま転ぶなどして、のどを突く事故が、5年間で6歳以下のこどもに120件報告されています。そのうち104件が3歳以下で、もっとも多いのは1歳。約2割が、入院を必要としました。東京消防庁の管内でも、5年間で0〜5歳のこども179人が救急搬送されています。

  • 歯みがきは、座らせて行う。歯ブラシを持ったまま、歩かせない・走らせない
  • こどもが自分でみがくあいだは、目を離さない
  • のど突き防止の工夫がある、こども用の歯ブラシを使う
  • 歯ブラシを、おもちゃ代わりに持たせない

8|指しゃぶり・おしゃぶり・お口ぽかん

指しゃぶり:合同委員会は、3歳ごろまでは、とくに禁止する必要はない、としています。4〜5歳を過ぎても頻繁に続く場合は、歯並びへの影響を考えて、小児歯科などで相談します。

おしゃぶり:1歳を過ぎたら、いつもくわえさせておくことはやめ、遅くとも2歳半までに卒業を、とされています。2歳ごろまでにやめれば、かみ合わせへの影響は元に戻りやすいとされています。

お口ぽかん:ふだん口が開いている状態(口唇閉鎖不全)は、小児歯科を受診した3〜12歳のこども約3,400人の調査で、30.7%に見られました。歯科を受診した子の保護者への調査ですので、こども全体の割合ではありません。鼻づまりが原因のこともありますので、気になる場合は、小児歯科や耳鼻咽喉科で相談できます。

9|歯をぶつけたとき

運動会や公園での転倒で、歯をぶつけることがあります。

  • 永久歯が根元から抜けてしまったときは、歯の根の部分にさわらず、乾かさないようにして、できるだけ早く歯科へ。専用の保存液がなければ、冷たい牛乳にひたして持って行きます
  • 乳歯が抜けた場合は、下で育っている永久歯を傷つけないよう、元に戻さないことがあります。いずれにしても、歯科を受診してください
  • 歯がぐらぐらする、色が変わってきた、歯ぐきが腫れてきた場合も、受診を

10|保健室でお手伝いできること

女性とこどもの保健室は、歯の治療や予防処置を行う施設ではありません。歯のことは、歯科医院や市区町村の歯科健診でご相談ください。1歳6か月と3歳の健診には、歯科健診がふくまれています。

理学療法士としてお手伝いできるのは、口のまわりと全身の発達の関わりです。

  • 食べるとき・歯みがきのときの、座る姿勢と足の位置
  • 口が開きやすい子の、姿勢や体幹の様子の確認
  • 仕上げみがきをいやがる子への、体の支え方や姿勢の工夫
  • 感覚が敏感で、歯ブラシが苦手な子への関わり方のご相談

11|今日から持ち帰っていただきたい5つのこと

  1. フッ化物配合の歯みがき剤は、歯が生えたらすぐに。2歳までは米粒程度、3〜5歳はグリーンピース程度。濃度は1000ppmが目安です。
  2. みがいたあとのうがいは、少量の水で1回だけ。
  3. 食器の共有を避けることの効果は、根拠が強くありません。気にしすぎなくて大丈夫です。
  4. 母乳そのものは、むし歯の直接の原因ではありません。大切なのは、歯をきれいにしておくこと。
  5. 歯ブラシをくわえたまま歩かせない。のど突き事故は、1〜2歳に多く起きています。

むし歯予防は、「あれもだめ、これもだめ」から、「効果の確かなことを、淡々と」へ。少し、肩の力を抜いてください。


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本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。


参考文献・出典

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  4. 日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会「4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」2023年1月.
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