【毎日コラム】体重ではなく、成長曲線を見る。こどもの肥満とやせ、そして声のかけ方

秋は、学校の身体測定の結果が返ってきたり、運動会で久しぶりにほかの子と並んだ姿を見たりして、わが子の体格が気になる季節かもしれません。
「うちの子、太りすぎ?」「やせすぎでは?」。その心配から、つい「食べすぎじゃない?」「もっと食べなさい」と声をかけたくなります。
今日は、こどもの肥満とやせについて、いまの日本の数字、見るべきポイント、そして研究が示している「声のかけ方」の大切さをお伝えします。
1|肥満も、やせも、増えている

文部科学省の学校保健統計(令和6年度)によると、肥満傾向のこどもは、11歳の男子で13.00%、女子で10.02%。令和元年度(男子11.11%、女子8.84%)より高くなっています。男子では、9歳以降、おおむね1割を超えています。
やせ傾向のこどもも、増えています。14歳女子で3.58%(令和元年度2.59%)、17歳女子で2.33%(同1.71%)、17歳男子で3.43%(同2.68%)です。
なお、令和2〜5年度は測定の時期がふだんと違ったため、文部科学省はほかの年度と比べられないとしています。ここでは、令和元年度と令和6年度を比べました。
2|どうやって判定するのか
こどもは身長が伸びている途中ですから、大人のようにBMIだけで判定することはできません。日本では「肥満度」が使われます。
肥満度(%)=(実際の体重 − 身長別の標準体重)÷ 身長別の標準体重 × 100
- 学童:+20%以上が軽度肥満、+30%以上が中等度、+50%以上が高度肥満。−20%以下がやせ
- 幼児:+15%以上が「太りぎみ」、+20%以上が「やや太りすぎ」、+30%以上が「太りすぎ」
学校から届く健康診断の結果に、肥満度が書かれていることがあります。
ただ、それ以上に大切なのが、成長曲線です。母子健康手帳の後ろのほうに、身長と体重のグラフがあります。1回の測定値ではなく、これまでの数字を点でつないで、「その子のカーブ」を見ます。
- 体重のカーブだけが、上の線をまたいで上がっていく → 肥満が進んでいるサイン
- 体重のカーブが、下の線をまたいで下がっていく → やせが進んでいるサイン
- 身長の伸びが止まっている、ゆるやかになっている → 体重にかかわらず、相談したいサイン
日本小児内分泌学会によると、ふつうの肥満では身長もよく伸びます。太っているのに身長の伸びが悪い場合は、ホルモンの病気などが隠れていることがあります。
3|幼児期に見ておきたいこと
赤ちゃんは、1歳ごろまでふっくらしていますが、歩き始めるとほっそりしていきます。BMI(カウプ指数)は幼児期にいったん下がり、5〜6歳ごろに再び上がり始めます。この上がり始めを「アディポシティ・リバウンド」と呼びます。
この上がり始めが早い子ほど、将来、肥満になりやすいことが知られています。日本の研究でも、4歳より前に上がり始めた子は、12歳時点でBMIが高く、血液中の脂質にも違いが見られました。幼児肥満ガイドは、3歳の健診でBMIが1歳6か月のときより増えている子は、その時点で肥満でなくても、将来の肥満のリスクが高いとしています。
同じガイドには、5歳で太りぎみ以上だった子の59%が、12歳でも肥満だったというデータが紹介されています。
だからといって、幼児に食事制限をするのではありません。ガイドは、「幼児期は成長が著しいため、無理な減量は行わず、まず規則正しい生活習慣を」としています。体重を減らすのではなく、体重の増え方をゆるやかにして、身長が伸びるのを待つ。そうすれば、体格は自然に整っていきます。
4|こどもの肥満は、大人まで続くのか
約20万人のデータをまとめた分析(Simmonds ら、2016年)では、肥満のこどもの約55%が思春期にも肥満で、思春期に肥満だった人の約80%が、大人になっても肥満でした。
一方で同じ分析は、肥満の大人の70%は、こどものころには肥満ではなかった、とも報告しています。こどもの肥満は将来に影響しやすいけれど、それで将来が決まるわけではない、ということです。

5|原因について、分かっていること
こどもの肥満に関わる生活習慣として、研究で関連が示されているものを挙げます。いずれも主に観察研究で、「これが原因」と断定できるものではありません。
- 睡眠:睡眠の短いこどもは、将来の肥満が約2倍多い(メタ分析)。富山県の3歳児8,941人の調査でも、睡眠が9〜10時間の子は、11時間以上の子に比べて肥満が1.3倍でした
- 甘い飲みもの:1日1杯増えるごとに、BMIがわずかに上がる。比較試験では、甘い飲みものを減らすと、BMIの増加が抑えられました
- 画面を見る時間:1日2時間以上で、肥満が1.67倍(ある時点での比較)
- 体を動かすこと:十分に活動している子は、肥満が3割少ない
- 朝食:朝食を抜く子に肥満が多いとされてきましたが、時間を追って調べた研究では、関連がはっきりしませんでした
この中で、比較試験による裏づけがあるのは、「甘い飲みものを減らす」ことです。睡眠時間の確保とあわせて、家庭で取り組みやすい点でもあります。
6|運動や生活指導の効果は、控えめ
理学療法士として、運動の効果についても正確にお伝えします。
6〜11歳の肥満のこどもへの、食事・運動・行動を組み合わせた取り組みについてのコクランレビュー(70試験)では、効果は「小さく、短期的」と結論されています。予防を目的とした取り組みのレビュー(2024年)でも、運動による効果はわずかで、長期的な差は見られませんでした。
運動が無意味ということではありません。体を動かすことは、体力、骨、睡眠、気分、友だちとの関係にとって大切です。ただ、「運動させれば、やせる」という期待をこどもに背負わせるのは、公平ではありません。体重は、結果のひとつにすぎないのです。
7|いちばん大切なこと:体重の話をどうするか
こどもの体格が気になったとき、親はどう声をかければよいのでしょうか。
親の言葉とこどもの心身の関係を調べたメタ分析(Gillison ら、2016年)によると、「やせなさい」と促したり、体重や体型を批判したりする声かけは、こどもが自分の体に否定的になること、無理なダイエット、不健康な食行動と関連していました。一方、体重には触れずに、健康的な生活を励ます声かけは、良い結果と関連していました。
米国の研究でも、家庭での「体重」に焦点を当てた会話は、ダイエットや過食と関連し、「健康的な食事」に焦点を当てた会話は、それらを防ぐ方向に関連していました。日本の中学生1,172人の調査では、体型をからかわれた経験がある子は、男子16.4%、女子32.5%。その経験は、ダイエット行動と結びついていました。
これらは関連を示す研究で、因果関係が証明されたわけではありません。それでも、米国小児科学会は、肥満と摂食障害の両方を防ぐために、次のことを勧めています。
- 体重ではなく、健康的な生活習慣に焦点を当てる
- 家族そろって食事をする機会を増やす
- 家庭の中で、体重や体型の話、からかいをしない
- ダイエットを勧めない
具体的には、こう言い換えられます。「太るよ」ではなく、「今日は一緒に歩いて行こうか」。「食べすぎ」ではなく、「ジュースは週末のお楽しみにしよう」。こども本人だけを変えようとせず、家族みんなの習慣として変えていく。それが、研究が示している方向です。

8|やせのサインを見逃さない
肥満以上に、急いで気づきたいのが、思春期のやせです。
国立成育医療研究センターの調査では、神経性やせ症(拒食症)で初めて外来を受診したこどもは、2019年度に比べて2020年度に約1.6倍に増えました。2024年度の調査でも約1.5倍と、高いままです。男の子の割合も、8.9%から16.1%に増えています。
オーストラリアの追跡研究では、厳しいダイエットをした10代の女子は、摂食障害を発症するリスクが18倍でした。「ダイエットしているだけ」と思っているうちに、進んでいくことがあります。
学校と医療の連携のための指針は、次のようなサインを挙げています。
- 学期ごとの測定で、体重が増えていない。成長曲線からはっきり外れてきた
- 肥満度が−20%より低い
- 月経が3か月以上来ない。来ていた月経が止まった
- 脈が遅い(1分間に50回未満)、体温が低い(35度未満)
食事の量や内容への強いこだわり、家族と一緒に食べたがらない、過度な運動といった変化が、あわせて見られることもあります。
成長期のこどもは、体重が「減っていない」だけでは安心できません。身長が伸びているのに体重が増えていなければ、それはやせが進んでいるということです。気になるときは、小児科に相談してください。様子を見続けるより、早めに相談してください。
9|保健室でお手伝いできること
女性とこどもの保健室では、こどもの体格そのものを「治す」ことではなく、体を動かすことが楽しくなるお手伝いをしています。
- 運動が苦手な子の、体の使い方の確認と、遊びを通じた運動のご提案
- 体が大きいために起こりやすい、ひざ・足・腰の痛みのご相談
- 成長曲線の見方を、母子健康手帳を使ってご一緒に確認
- スポーツをしている女の子の、月経と体重のご相談
成長曲線から外れてきている場合、やせや月経の停止がある場合は、小児科の受診をおすすめします。
10|今日から持ち帰っていただきたい5つのこと
- 肥満傾向の子は11歳男子で13%、やせ傾向の子も3%前後。どちらも5年前より増えています。
- 1回の数字ではなく、成長曲線で「その子のカーブ」を見ます。
- こどもの肥満は、減量ではなく、体重の増え方をゆるやかにして身長の伸びを待つのが基本です。
- 体重や体型の話は、しない。健康的な習慣を、家族みんなのこととして変えていきます。
- 体重が増えない、月経が止まった、食事へのこだわりが強い。思春期のやせのサインは、早めに小児科へ。
こどもの体は、数字で評価される対象ではなく、これから何十年も付き合っていく、その子自身のものです。
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本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。
参考文献・出典
- 文部科学省「令和6年度 学校保健統計(学校保健統計調査の結果)確定値」2025年2月/同「令和元年度 学校保健統計調査」.
- 日本小児内分泌学会「肥満」(一般向け解説).
- 日本小児医療保健協議会 栄養委員会 小児肥満小委員会「幼児肥満ガイド」2019年.
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- 厚生労働科学研究班「摂食障害に関する学校と医療のより良い連携のための対応指針(中学校版)」.

