【毎日コラム】流産・死産のあとに。体と、こころと、使える制度のこと

今日の内容は、流産と死産についてです。経験されたばかりの方、いま読むのがつらい方は、どうぞ無理をなさらず、読めるときに、読めるところだけお読みください。
10月15日は、海外では、妊娠中や生まれて間もなく亡くなった赤ちゃんを想う日とされています。日本でも、10月9日から15日を啓発週間として、各地で静かな取り組みが行われるようになりました。
流産や死産は、決してめずらしいことではありません。けれども、「よくあること」と「つらくないこと」は、まったく別のことです。今日は、体のこと、こころのこと、使える制度、そして周りの人にできることを、研究と公的な資料にもとづいて整理します。
1|どのくらいの頻度で起こるのか
2021年に医学誌 Lancet に掲載された総説(Quenby ら)によると、確認された妊娠のうち、流産に至る割合は15.3%です。およそ6〜7回の妊娠に1回、という頻度になります。日本産科婦人科学会も、妊娠の約15%が流産になると説明しています。
流産の頻度は、年齢とともに上がります。ノルウェーの全国データ(Magnus ら、BMJ 2019年)では、25〜29歳で9.8%、35〜39歳で16.7%、40〜44歳で32.2%でした。
死産については、厚生労働省の令和7年人口動態統計で、年間15,329胎(うち自然死産は6,970胎)と報告されています。
数字を並べたのは、「だから仕方がない」と言うためではありません。あなただけに起きたことではない、ということをお伝えしたいからです。
2|原因について、分かっていること
日本産科婦人科学会は、妊娠12週未満の早い時期の流産について、原因の多くは赤ちゃん自身の染色体の異常であり、ほとんどが偶然に起こるものだと説明しています。
「あのとき仕事を休んでいれば」「重いものを持ったから」「上の子を抱っこしたから」。多くの方が、ご自分の行動をさかのぼって原因を探されます。けれども、安静にしていれば流産を防げる、ということは確かめられていません。安静の効果を調べた研究をまとめたコクランレビュー(Aleman ら、2005年)は、安静が流産を防ぐという根拠はないと結論しており、日本産科婦人科学会も同じ趣旨の説明をしています。
ご自分を責める気持ちは、赤ちゃんを大切に思っていたからこそ生まれるものです。その気持ちを否定する必要はありません。ただ、医学的には、あなたの日常の行動が原因だったと考える理由は、ほとんどの場合ありません。
死産や妊娠中期以降の流産では、原因を調べても分からないことが少なくありません。「分からない」という答えは、とてもつらいものです。それでも、「分からない」は「あなたのせい」という意味ではありません。
3|くり返す場合:不育症
流産や死産を2回以上くり返す場合を、不育症と呼びます。妊娠を経験した女性の約5%にあたるとされています。
厚生労働省研究班などがまとめた相談対応マニュアルによると、検査をしても、65.1%の方ではリスクとなる要因が見つかりません。その多くは、偶然が重なったものと考えられています。そして、不育症の方の約8割以上が、最終的には出産に至っています。
2回以上くり返したときは、産婦人科で不育症の検査について相談できます。検査や治療の費用に助成を行っている自治体もあります。
4|体の回復
流産・死産のあとの体は、週数によって違いはありますが、出産のあとと同じように回復の過程をたどります。
- 出血は、しばらく続きます。量が急に増える、強い腹痛がある、熱が出る、においの強いおりものがある場合は、すぐに産婦人科へ連絡してください
- 月経は、多くの場合4〜6週ほどで戻ります
- 妊娠中期以降では、母乳が出ることがあります。胸の張りがつらいときは、冷やす、きつめの下着で支えるなどの対処があり、産院で相談できます。お薬で止める方法もあります
- 骨盤まわりのゆるみ、腰の痛み、尿もれなど、産後と同じ変化が起こることがあります
赤ちゃんを連れていないのに、体だけが「産後」である。そのことが、いっそうつらく感じられることがあります。体に起きていることは、赤ちゃんがたしかにそこにいた証でもあります。体をいたわることを、後回しにしないでください。
5|こころに起こること
厚生労働省の調査研究(令和2年度)は、過去5年以内に流産や死産を経験した女性618人にたずねています。

直後につらさを感じた人は93.0%。6か月後でも51.2%、1年以上たっても32.2%の方が、つらさを抱えていました。
英国の研究(Farren ら、2020年)では、早期の流産や子宮外妊娠を経験した女性のうち、1か月後に心的外傷後ストレスの基準にあてはまった人は29%、9か月後でも18%でした。
「もう何か月もたつのに、まだ泣いてしまう」「周りは忘れているのに、自分だけが立ち止まっている」。そう感じている方へ。半年たっても、1年たっても、つらいのは普通のことです。悲しみに、期限はありません。
予定日だった日、亡くなった日、ほかの方の妊娠や出産の知らせ。そうした節目に、気持ちが大きく揺れることもあります。それも、おかしなことではありません。
同じ調査では、パートナーの73.3%もつらさを感じていました。悲しみ方は人によって違います。泣く人もいれば、黙って仕事に向かう人もいます。表し方が違うだけで、悲しんでいないわけではないことが多いのです。
6|誰かに話すこと
同じ調査で、30.3%の方が「誰にも相談しなかった」と答えています。一方で、相談した方のうち77.1%は、「つらさがやわらいだ」と答えていました。
話さなければいけない、ということではありません。話したくないときは、話さなくていいのです。ただ、話したいと思ったときに、聞いてくれる場所があることは知っておいてください。
- こども家庭庁のウェブサイト「流産・死産等を経験された方へ」には、都道府県ごとの相談窓口の一覧があります
- 各都道府県などの「性と健康の相談センター」でも、相談を受けています
- お住まいの市区町村の保健センター(母子保健の担当)にも、相談できます
- 同じ経験をした方どうしが語り合う自助グループ(ピアサポート)も、各地にあります
眠れない、食べられない状態が2週間以上続く、日常生活が送れない、消えてしまいたい気持ちがある。そのようなときは、どうかひとりで抱えず、産婦人科や心療内科・精神科、または「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)、「よりそいホットライン」(0120-279-338)に連絡してください。

7|使える制度
あまり知られていませんが、流産・死産を経験した方も、さまざまな制度の対象になります。
- 産後ケア事業・産婦健康診査:厚生労働省は令和3年5月31日付の通知で、流産・死産を経験した女性も対象に含まれることを明確にしました。実施内容は市区町村によって異なります
- 産後休業:妊娠4か月(85日)以降の流産・死産は、労働基準法の「出産」にあたり、8週間の産後休業の対象です
- 出産育児一時金:妊娠4か月(85日)以降の流産・死産は、支給の対象です
- 母性健康管理措置:流産・死産のあと1年以内は、医師の指導にもとづく通院時間の確保や勤務の軽減などを、職場に求めることができます
妊娠12週以降の場合は、7日以内に死産届を提出し、火葬の手続きを行うことになります。心身ともにいちばんつらい時期に重なる手続きです。病院のスタッフや自治体の窓口に、遠慮なく手伝いを求めてください。
8|次の妊娠について
「次の妊娠までは、何か月かあけたほうがいい」と聞いたことがある方もいるでしょう。
流産後の妊娠の間隔を調べた研究(Kangatharan ら、2017年/Tessema ら、2022年)では、早い時期に妊娠した場合でも、その後の経過が悪くなることは示されていません。日本産科婦人科学会も、流産後に避妊の期間を設ける必要はなさそうだ、という趣旨の説明をしています。
ただし、処置の内容や週数、体の状態によって事情は変わります。具体的な時期は、ご自身の主治医の指示にしたがってください。
そして、体の準備とこころの準備は、別のものです。「次を考えられない」のも、「すぐにでも」と思うのも、どちらも自然な気持ちです。次の妊娠は、亡くなった赤ちゃんの「代わり」ではありません。
9|周りの方へ
経験された方が傷ついた言葉として、調査や支援の手引きでくり返し挙げられているものがあります。
- 「よくあることだから」
- 「また次があるよ」「若いんだから」
- 「がんばって」「元気を出して」
どれも、励まそうとして出る言葉です。けれども、亡くなったのは「その子」であって、ほかの誰かで埋め合わせることはできません。
支えになったと挙げられているのは、特別な言葉ではありません。話を聞いてくれたこと。そばにいてくれたこと。赤ちゃんのことを、いなかったことにしなかったこと。
かける言葉が見つからないときは、「なんと言っていいか分からないけれど、気にかけているよ」と、そのまま伝えてください。それで十分です。
10|保健室でお手伝いできること
女性とこどもの保健室は、流産・死産を経験された方の体のケアもお受けしています。
- 腰や骨盤まわりの痛み、尿もれなど、体の回復のご相談
- 眠れない、体がこわばる、といった状態に対する体からのケア
- ご希望があれば、お話を伺うこと。話したくないことは、お話しいただかなくて大丈夫です
当施設は、赤ちゃん連れの方も来られる場所です。それがおつらい場合は、ご予約のときに一言お知らせください。お時間や場所について、できるかぎり配慮いたします。こころの専門的な治療が必要と思われる場合には、医療機関をご案内します。
11|今日、お伝えしたかった5つのこと
- 流産は、確認された妊娠の約15%に起こります。早い時期の流産のほとんどは、偶然に起こるものです。
- 安静にしていれば防げた、という根拠はありません。
- 半年たっても約半数、1年たっても約3割の方が、つらさを抱えています。悲しみに期限はありません。
- 相談した方の8割近くが、つらさがやわらいだと答えています。相談窓口は、都道府県ごとに用意されています。
- 流産・死産を経験した方も、産後ケア、産後休業、出産育児一時金などの対象になります。
赤ちゃんがいた時間は、どれほど短くても、たしかにあった時間です。
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「病院に行くほどではないけれど、誰かに診てもらいたい」——その段階でのご相談を、いちばん歓迎しています。
本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。
参考文献・出典
- Quenby S, et al. Miscarriage matters: the epidemiological, physical, psychological, and economic costs of early pregnancy loss. Lancet. 2021;397(10285):1658-1667.
- Magnus MC, Wilcox AJ, Morken NH, Weinberg CR, Håberg SE. Role of maternal age and pregnancy history in risk of miscarriage: prospective register based study. BMJ. 2019;364:l869.
- 日本産科婦人科学会「流産・切迫流産」(一般の方向け解説).
- Aleman A, Althabe F, Belizán J, Bergel E. Bed rest during pregnancy for preventing miscarriage. Cochrane Database Syst Rev. 2005;(2):CD003576.
- 厚生労働省「令和7年 人口動態統計」.
- 厚生労働科学研究班/日本医療研究開発機構 不育症研究班「不育症管理に関する提言」「不育症相談対応マニュアル」.
- Farren J, et al. Posttraumatic stress, anxiety and depression following miscarriage and ectopic pregnancy: a multicenter, prospective, cohort study. Am J Obstet Gynecol. 2020;222(4):367.e1-367.e22.
- 令和2年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業「流産や死産を経験した女性に対する心理社会的支援に関する調査研究」報告書.
- 厚生労働省 子ども家庭局母子保健課長通知「流産や死産を経験した女性等への心理社会的支援等について」令和3年5月31日.
- こども家庭庁「流産・死産等を経験された方へ」(相談窓口一覧).
- Kangatharan C, Labram S, Bhattacharya S. Interpregnancy interval following miscarriage and adverse pregnancy outcomes: systematic review and meta-analysis. Hum Reprod Update. 2017;23(2):221-231.
- Tessema GA, et al. Interpregnancy interval and adverse pregnancy outcomes among pregnancies following miscarriages or induced abortions in Norway (2008–2016): a cohort study. PLoS Med. 2022;19(11):e1004129.
- Royal College of Obstetricians and Gynaecologists/NHS. Early miscarriage: information for you.


