【毎日コラム】あおむけで、何も置かない寝床に。11月はSIDS対策強化月間、赤ちゃんの安全な睡眠環境

今日から11月。毎年11月は、乳幼児突然死症候群(SIDS)の対策強化月間です。SIDSは寒い季節に起こりやすい傾向があるため、国は平成11年度から、この月に重点的な呼びかけを行っています。
SIDSは、それまで元気だった赤ちゃんが、眠っているあいだに突然亡くなってしまう病気です。原因は、まだ分かっていません。けれども、リスクを下げる方法は分かっています。
今日は、赤ちゃんの眠る環境について、国の呼びかけと研究をもとに整理します。こわがらせるためではなく、今夜からできることをお伝えするための内容です。添い寝のことも、現実に即してお話しします。
1|SIDSは、30年で10分の1近くに減った

こども家庭庁によると、令和6年(2024年)にSIDSで亡くなった赤ちゃんは55人。乳児期の死亡原因の第3位です。
平成8年(1996年)には、526人でした。30年たらずで、10分の1近くまで減っています。この間に広まったのが、新しい薬でも機械でもなく、「あおむけに寝かせる」という呼びかけでした。
もうひとつ、知っておきたい数字があります。SIDSとは別に、眠っているあいだの「窒息」という事故があります。2020〜2024年の5年間に、不慮の事故で亡くなった0歳の赤ちゃんは303人。そのうち、ベッドの中での窒息が109人(36.0%)で、もっとも多い原因でした。
SIDS(病気)と窒息(事故)は別のものですが、防ぐための方法は、ほとんど重なっています。安全な睡眠環境は、その両方から赤ちゃんを守ります。
2|国が呼びかける3つのポイント
こども家庭庁は、SIDSのリスクを下げるために、次の3つを呼びかけています。
- 1歳になるまでは、寝かせるときはあおむけに
- 無理のない範囲で、母乳育児を
- たばこをやめる
これらの根拠のひとつが、日本で行われた調査です。SIDSで亡くなった赤ちゃん377人と、そうでない赤ちゃん375人を比べたところ、SIDSのリスクは、うつぶせ寝で3.0倍、人工栄養で4.8倍、両親の喫煙で4.7倍でした。
この数字を見て、ミルクで育てている方が不安になる必要はありません。こども家庭庁も「無理のない範囲で」としています。母乳が出にくい、事情があって与えられない、ということは誰にでもあります。そのぶん、寝かせ方と睡眠環境、たばこという、変えられる点を整えれば大丈夫です。
3|あおむけ寝:なぜ、いつまで
うつぶせ寝がSIDSのリスクを高めることは、世界中の研究で確かめられています。多くの研究をまとめた分析では、うつぶせ寝のリスクは、あおむけ寝の約3〜7倍でした。
横向きは? 横向き寝も、あおむけ寝に比べてリスクが約2倍です。横向きは不安定で、うつぶせに転がりやすいためです。「吐いたものがのどに詰まらないように横向きに」と考える方もいますが、健康な赤ちゃんでは、あおむけで吐いたものを詰まらせることが増えるという根拠はありません。寝かせるときは、あおむけにしてください。
寝返りを始めたら? 「朝起きたらうつぶせになっていた」と、心配する声をよく伺います。米国小児科学会は、赤ちゃんが自分で、あおむけからうつぶせ、うつぶせからあおむけの両方向に寝返りできるようになっていれば、寝ているあいだに向きを戻さなくてよい、としています。寝かせるときにあおむけにすること、そして寝床に顔をふさぐものを置かないことが大切です。
寝返りしそうな様子が見られたら、おくるみ(スワドル)は卒業します。腕が使えないままうつぶせになると、顔を上げられないためです。おくるみで巻かれた赤ちゃんがうつぶせになった場合、リスクが大きく高まることが報告されています。
医師から指示がある場合:病気などの理由で、医師からうつぶせ寝を勧められている場合は、その指示にしたがってください。
4|「起きているときのうつぶせ」は、むしろ大切
理学療法士として、ここは強調しておきたい点です。
避けるのは、「眠っているときのうつぶせ」です。起きていて、大人が見ているときのうつぶせ遊び(タミータイム)は、首や背中、腕の力を育て、頭の形のゆがみを防ぐためにも役立ちます。米国小児科学会は、生後7週ごろまでに、1日あわせて15〜30分を目安に、少しずつ増やしていくことを勧めています。
最初は、大人の胸の上で数十秒から。機嫌のよいときに、短い時間を何度も。「寝るときはあおむけ、遊ぶときはうつぶせ」と覚えてください。うつぶせのまま眠ってしまったら、あおむけに戻します。
5|寝床には、何も置かない
こども家庭庁は、睡眠中の窒息を防ぐために、次のことを呼びかけています。
- かためで平らな寝具を使う:やわらかい敷布団やマットレスは、顔が埋まります。傾斜のついた寝具も避けます
- 1歳までは、掛け布団を使わない:スリーパー(着る毛布)や、室温の調節で温かさを保ちます
- 寝床には何も置かない:枕、タオル、ぬいぐるみ、クッション、ベッドのまわりのガード(バンパー)も置きません
- 睡眠用の製品は、安全基準を満たしたものを、説明どおりに使う
- 赤ちゃん専用の寝床に寝かせる
消費者庁が0歳児の就寝中の窒息死160件を分析したところ、状況が分かったものでは、「顔がマットレスなどに埋まる」「寝具が顔を覆う・首に巻きつく」「ベッドと壁のすき間にはさまる」が多くを占めていました。
赤ちゃんの寝床は、殺風景なくらいでちょうどよいのです。かわいい枕やぬいぐるみは、起きているときに。
寒い季節は、とくに掛けものを増やしたくなります。けれども、着せすぎ・温めすぎも、SIDSのリスクとされています。室内では帽子をかぶせない。大人が快適な室温で、大人より1枚多いか同じくらいの衣類を目安に。背中に手を入れて汗をかいていたら、着せすぎです。
6|大人用ベッドの危険
消費者庁によると、6歳以下のこどもがベッドから落ちた事故は、約5年半で912件報告されており、そのうち0歳が534件。大人用ベッドでの事故が、722件を占めていました。0歳児がベッドからの転落に関連して亡くなった例は、5年間で25件あり、うち18件が窒息でした。
- 消費者庁は、満2歳になるまでは、できるだけベビーベッドに寝かせることを勧めています
- 大人用ベッドにつける幼児用ベッドガードは、生後18か月未満の子には使いません。マットレスとのすき間にはさまる事故が起きています
- ベビーベッドの柵は、必ず上げておきます

7|添い寝について
日本では、赤ちゃんと同じ布団で寝ることは、ごく一般的です。夜間の授乳が続く時期、添い寝が楽なのも事実です。一方で、海外の指針には「同じ寝床で寝ないこと」と書かれているものがあり、戸惑う方もいらっしゃいます。
研究の結果は、一致していません。
- 英国などのデータを分析した研究(Carpenter ら、2013年):両親がたばこを吸わず、母乳で育てていても、生後3か月未満の添い寝は、SIDSのリスクが約5倍。ただし、もともとの頻度が非常に低いため、実際の増加はごくわずかです
- 英国の別の研究(Blair ら、2014年):ソファでの添い寝は約18倍、飲酒したあとの添い寝は約18倍、喫煙者のとなりでの添い寝は約9倍。一方、こうした危険な条件がなければ、添い寝によるリスクの上昇は見られませんでした
このため、国によって方針が違います。米国小児科学会は、同じ部屋の、別の寝床で寝ることを、少なくとも生後6か月まで勧めています。英国の指針は、添い寝を一律に禁止するのではなく、安全な方法と、避けるべき状況を伝える、という立場です。
日本のこども家庭庁は、添い寝が「とくに危険」な場合として、次の3つを挙げています。そのうえで、これは禁止ではなく、予防のための情報だとしています。
- 大人が、眠気をもよおす薬を飲んでいるとき
- 大人が、お酒を飲んでいるとき
- 赤ちゃんが、早産や低出生体重で生まれた場合
研究から、これらに加えて避けたいのは、次の状況です。
- ソファやひじかけ椅子で、赤ちゃんと一緒に眠ること:もっとも危険とされています。授乳中に眠くなったら、赤ちゃんを寝床に戻すか、誰かに代わってもらってください
- たばこを吸う人のとなり
- 生後3か月未満の時期:リスクが高いという報告があります
日本の法医学の調査では、突然亡くなった赤ちゃんの61%が添い寝の状態でした。また、乳幼児健診での調査では、添い寝中に「ひやっとした」経験がある人が10.6%、添い乳で13.2%いました。「日本は添い寝の文化だから大丈夫」とは言えません。
まとめると、いちばん安全なのは、「同じ部屋の、赤ちゃん専用の寝床」です。添い寝をする場合は、上の危険な状況を避け、かたい敷布団で、大人用の掛け布団や枕が赤ちゃんの顔にかからないようにしてください。添い寝をしていることで、ご自分を責める必要はありません。知っておいていただきたいのは、「ソファ」「お酒」「薬」「たばこ」は避ける、ということです。
8|ほかに分かっていること
- 母乳:2か月以上の母乳育児で、SIDSのリスクが下がります。完全母乳でなくても、効果が見られています
- おしゃぶり:寝かしつけのときのおしゃぶりの使用は、SIDSのリスクが低いことと関連しています。無理に使わせる必要はなく、眠ったあとに口から落ちても、入れ直さなくてかまいません。母乳育児の場合は、授乳が軌道に乗ってからがよいとされています
- 予防接種:予防接種は、SIDSを増やしません。むしろ、接種を受けている赤ちゃんでリスクが低いという報告があります
- たばこ:妊娠中の喫煙も、産後に赤ちゃんのそばで吸うことも、リスクを高めます。ご家族もふくめて、禁煙を
- 家庭用のモニター:呼吸や心拍を見守る市販の機器について、米国小児科学会は、SIDSのリスクを下げる根拠はない、としています。使うこと自体は自由ですが、機器があるからといって、ほかの対策を省かないでください
9|祖父母や、預け先にも伝える
「昔は、うつぶせ寝のほうが頭の形がよくなると言われた」「寒いから、布団をたくさん掛けてあげないと」。祖父母の世代が子育てをしていたころは、いまとは違うことが勧められていました。
赤ちゃんを預けるときは、「寝かせるときはあおむけ」「掛け布団と枕は使わない」「寝床には何も置かない」の3点を、ぜひ伝えてください。国の保育施設向けガイドラインも、あおむけ寝、やわらかい布団やぬいぐるみを使わないこと、睡眠中に定期的に呼吸や体の向きを確認することを定めています。
10|亡くした方へ
ここまでの内容は、これからのための情報です。すでに赤ちゃんを亡くされた方を、責めるものではありません。SIDSは、すべての対策をしていても起こることがある、原因の分かっていない病気です。「あのとき、こうしていれば」とご自分を責める必要はありません。
NPO法人SIDS家族の会は、赤ちゃんを亡くしたご家族による支援団体で、電話相談や集まりを行っています。流産や死産でお子さんを亡くした方も対象です。
11|保健室でお手伝いできること
女性とこどもの保健室では、理学療法士が、赤ちゃんの発達と、保護者の方の体の両面からお手伝いします。
- 起きているときのうつぶせ遊び(タミータイム)の、月齢に合わせた進め方
- 向きぐせ、頭の形が気になる赤ちゃんの、抱き方や遊び方の工夫
- 寝返りの練習と、寝返りを始めた時期の睡眠環境のご相談
- 夜間の授乳や抱っこで疲れた、保護者の方の体のケア
「うつぶせにするのがこわくて、遊ばせられない」というご相談も、歓迎しています。安全な方法を、ご一緒に確かめましょう。
12|今日から持ち帰っていただきたい5つのこと
- 1歳になるまでは、寝かせるときはあおむけに。横向きでもなく、あおむけです。
- 寝床は、かためで平ら。枕、掛け布団、ぬいぐるみは置かず、スリーパーで調節します。
- ソファで赤ちゃんと一緒に眠らない。お酒や眠くなる薬を飲んだ日は、添い寝をしない。
- たばこは、家族みんなでやめる。
- 起きているときのうつぶせ遊びは、発達のために大切。寝るときとは、分けて考えます。
今夜、赤ちゃんの寝床を、もう一度だけ見直してみてください。
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「病院に行くほどではないけれど、誰かに診てもらいたい」——その段階でのご相談を、いちばん歓迎しています。
本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。
参考文献・出典
- こども家庭庁「赤ちゃんが安全に眠れるように」(乳幼児突然死症候群(SIDS)について/睡眠中の窒息事故について).
- こども家庭庁 乳幼児突然死症候群(SIDS)対策強化月間 報道発表(令和7年10月31日).
- こども家庭庁「こどもの不慮の事故の発生傾向と事故防止に向けた取組等」(令和7年12月).
- 厚生省 報道発表資料(平成10年6月1日、乳幼児突然死症候群(SIDS)に関する研究班の調査結果).
- Gilbert R, et al. Infant sleeping position and the sudden infant death syndrome: systematic review of observational studies and historical review of recommendations from 1940 to 2002. Int J Epidemiol. 2005;34(4):874-887.
- Li DK, et al. Infant sleeping position and the risk of sudden infant death syndrome in California, 1997–2000. Am J Epidemiol. 2003;157(5):446-455.
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- American Academy of Pediatrics. HealthyChildren.org(安全な睡眠に関する保護者向け情報).
- Pease AS, et al. Swaddling and the risk of sudden infant death syndrome: a meta-analysis. Pediatrics. 2016;137(6):e20153275.
- 消費者庁「0歳児の就寝時の窒息死に御注意ください!」平成28年10月24日.
- 消費者庁「0〜1歳児のベッドからの転落事故に御注意ください!」令和2年11月13日.
- Carpenter R, et al. Bed sharing when parents do not smoke: is there a risk of SIDS? An individual level analysis of five major case-control studies. BMJ Open. 2013;3(5):e002299.
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- NPO法人 SIDS家族の会.


