健康な体作り

運動パフォーマンスを上げる

前回の記事で詳細に書いております、NO(一酸化窒素)と運動パフォーマンスについては多数の報告があり、体内でNOの産生を高めることにより、サイクリングにおける運動効率を上昇させたとする報告や1)、酸素消費効率が向上し、疲労困憊までの時間が延長したという報告があります2)。NOによる血管拡張・血流促進効果が起因していると考えられます。

ヒトがL-シトルリンを運動前に摂取すると、血中のNOレベルが増加することが報告されています3)。それと同時に、L-シトルリン摂取により筋持久力が向上したという報告もあります。例えば、L-シトルリンを運動前に摂取することで、ベンチプレスの反復回数の低下が優位に抑制され、運動後24時間、48時間後の筋肉痛も優位に抑制されたと報告されています4)。また最近では、持久的運動に関するパフォーマンス向上に関しても、複数のデータが報告されています。陸上競技やサッカー、トライアスロンなどの持久的運動を行なっているアスリート男性22名に、試験食としてプラセボまたはL-シトルリン2.4g/dayを8日間摂取させました。そして、8日目の運動負荷1時間前に試験食を摂取させた後、エルゴメーターにより4kmの走破時間を評価しました。
その結果、走破時間がプラセボ群に対し、L-シトルリン摂取群で優位に短縮されました。同様に、L-シトルリン群で運動中におけるペダルの回転強度も優位に高まっていました。さらに、運動後の体感をVASと呼ばれる指標で評価したところ、「筋肉の疲れ」と「集中力の欠如」に関する項目が、プラセボ群に比較してL-シトルリン群で優位に改善していました。このことから、Lシトルリンの摂取は持久的運動におけるパフォーマンスを上昇させると考えられます5)

 

それ以外にも、活動的な男性にL-シトルリン6g/dayを飲料形態で7日間摂取させエルゴメーターによる運動負荷試験を行なったところ、体内への酸素取り込みを改善し、疲労困憊までの時間を優位に延長させたとする報告や6)

20代のカヌー日本代表候補選手にL-シトルリンを4週間摂取させ持久トレーニング後のL-シトルリン非摂取期間と比較したオープン試験では、L-シトルリンの摂取により「全体的に楽」、「筋肉の疲れ」、「運動後の元気」の項目について優位に改善が見られ、「集中力」や「筋肉の張り」に関する体感も改善傾向にあることが示されました7)。さらに、男女の大学競泳選手に対し、トレーニング1時間前にL-シトルリン1.6gを単回摂取させ、50m×8本を4セット繰り返すインターバルトレーニングにおける泳タイムを評価したところ、プラセボ群と比較して全てのセットでL-シトルリンを摂取した群では平均泳タイムが速くなり、2セット目においては優位に早い泳タイムが確認された。これはL-シトルリン摂取により運動中の血流量が改善し、酸素の利用効率が高まることでエネルギー産生系が活性化され、泳パフォーマンスや休息時間中の回復が促進した可能性が考えられます。このことから、一過性のL-シトルリン摂取においても運動パフォーマンスが改善する可能性が示されました8)

以上に紹介した試験はL-シトルリンの運動パフォーマンスの向上効果を期待した場合、運動前の1〜2時間前の摂取が望ましいと考えられます。
さて次回は、シトルリンとアルギニンの相乗効果についてお話しします*

1) Lansley KE.et al,,Med Sci Sports Exerc,Jun43(6):1125-31(2001)
2) Stephen J,Belleyet al.J Appl physiol.106(6):1875-87(2009)
3) Sureda A,et al,Eur J Appl Physiol ,,Sep 110(2):341-51(2010)
4) Perez-Guisado J.et al,,J Strength Cond Res,24(5):1215-22(2010)
5) Suzuki T.et al,,JISSN.13:6(2016)
6) Balley SJ.et al..J Appl Physiol(1985) .119(4):385-95(2015)
7) 中垣ら 日本スポーツ栄養学会.(2016)
8) Morita M.et al,,Biochem Biophys Res Commun.2014Nov7:454(1):53-7

 

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