【毎日コラム】世界骨粗鬆症デーに。骨の貯金は20歳ごろまでに決まり、閉経後10年で15%減る

10月20日は、世界骨粗鬆症デーです。国際骨粗鬆症財団の今年の呼びかけは、「生涯にわたって、骨をつくり、守り、強くしよう」。
骨粗鬆症は、高齢の方の病気だと思われがちです。けれども、骨の量がもっとも多くなるのは18〜20歳ごろ。そこから先は、いかに減らさないかの勝負になります。つまり骨の健康は、10代の娘さんにも、産後の方にも、更年期の方にも、それぞれの段階で関わりのある話です。
今日は、女性の骨について、年代ごとに分かっていることを整理します。サプリメントや運動については、期待どおりではない研究結果も、そのままお伝えします。
1|日本の現状:推計1,590万人、検診受診率は5.9%
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版」は、日本の骨粗鬆症の患者数を1,590万人(女性1,180万人、男性410万人)と推計しています。患者の4人に3人が女性です。

日本の住民調査(ROAD研究)によると、太もものつけ根の骨で判定した骨粗鬆症の割合は、女性の50代で8.9%、60代で15.0%、70代で23.8%、80歳以上では49.0%でした。
一方、骨粗鬆症検診の受診率は、全国で5.9%(2024年、骨粗鬆症財団)。国は健康日本21(第三次)で15%を目標にしていますが、遠く届いていません。都道府県による差も大きく、もっとも高い福島県で15.8%です。
骨粗鬆症検診は、多くの自治体で40歳から70歳まで、5歳きざみの節目の年齢の女性を対象に行われています。対象年齢や費用は自治体によって違いますので、お住まいの市区町村の案内を確認してみてください。
2|骨の一生:ためる時期、保つ時期、減る時期
骨密度は、思春期に急速に増え、18〜20歳ごろに最大になります(最大骨量)。その後は40代半ばまで、ほぼ保たれます。
大きく変わるのが、閉経の前後です。骨を守るはたらきをしていたエストロゲンが減るためです。ガイドラインによると、閉経後の2年間で5.5%、その後の3年間で4.5%、次の5年間で5%。閉経から10年間で、骨密度はおよそ15%下がります。
この流れから、年代ごとの課題が見えてきます。
- 10代:骨の「貯金」をつくる時期。ここでの蓄えが、一生の出発点になります
- 20〜40代:貯金を保つ時期
- 閉経前後〜:目減りをできるだけゆるやかにする時期
- 高齢期:骨を守ることに加えて、転ばないことが大切になる時期
3|若い女性の「やせ」と無月経
骨の貯金をつくる時期に、気をつけたいのが、やせと無月経です。
令和6年の国民健康・栄養調査では、20〜30代女性の16.6%が、やせ(BMI 18.5未満)でした。体重が少なすぎたり、運動量に対して食事が足りなかったりすると、月経が止まることがあります。月経が止まるということは、骨を守るエストロゲンが出ていない、ということです。
日本の10代トップ選手を調べた研究では、月経が止まっている選手は、疲労骨折のリスクが12.9倍でした。神経性やせ症では、骨粗鬆症のリスクが12.6倍、骨折のリスクが1.84倍と報告されています。
「練習がきついと生理が止まるのは普通」「生理がないほうが楽」。そう思っている娘さんがいたら、それは骨からの警告です。3か月以上月経がないときは、婦人科を受診してください。
4|妊娠・授乳と骨
授乳中は、母乳にカルシウムを渡すため、お母さんの骨密度が一時的に下がります。これは授乳を終えると回復していく、自然な変化です。
まれに、妊娠後期から授乳期に、背骨の骨折を起こすことがあります(妊娠授乳関連骨粗鬆症)。日本の診療報酬データを用いた研究では、100万分娩あたり460件と推計されています。
産後の腰や背中の痛みのほとんどは、筋肉や関節からくるものです。けれども、動けないほどの強い痛みが急に起きた、身長が縮んだ、という場合は、整形外科を受診してください。

5|カルシウムとビタミンD:サプリメントは効くのか
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、成人女性のカルシウムの推奨量は1日650mg、ビタミンDの目安量は9.0μg、たんぱく質の推奨量は50gです。骨粗鬆症の方には、ガイドラインがカルシウム700〜800mg、ビタミンD 15〜20μgを提案しています。
日本人には、ビタミンDが足りていない人が多いことが分かっています。ROAD研究では、血液中のビタミンDが不足している人(20ng/mL未満)が21.6%、やや不足(20〜30ng/mL未満)が54.8%でした。
では、サプリメントで補えば骨折を防げるのでしょうか。ここは、期待どおりではない結果が多くなっています。
- 米国の大規模試験(VITAL):ビタミンDを飲んだ群と偽薬の群で、骨折に差はありませんでした
- 81の試験をまとめた分析:ビタミンDは、骨折にも転倒にも骨密度にも効果がありませんでした
- 地域で暮らす高齢者についての分析:カルシウム、ビタミンD、その併用のいずれも、骨折との関連はありませんでした
- 米国の予防医学の専門委員会(2018年):閉経後女性が骨折予防のために低用量のサプリメントを飲むことは、推奨していません。腎結石が増えることも指摘されています
- 一方で、カルシウムとビタミンDの併用で、骨折が6%、太もものつけ根の骨折が16%減ったという分析もあります
整理すると、「健康な人が念のため飲む」サプリメントには、骨折を防ぐ確かな効果は期待しにくい、ということです。ただし、骨粗鬆症と診断された方や、ビタミンDの欠乏がある方は話が別で、治療の一部として処方されます。
まずは食事から。乳製品、小魚、大豆製品、青菜でカルシウムを。魚ときのこでビタミンDを。そして、適度に日光に当たること。地味ですが、それが基本です。
6|運動:ウォーキングだけでは、足りない
理学療法士として、ここは正確にお伝えしたいところです。
ウォーキングの効果:メタ分析では、ウォーキングだけでは腰の骨密度に効果は見られず、太もものつけ根でわずかに効果がある、という結果でした。歩くことは心臓にも気分にも良いのですが、「骨を強くする運動」としては力不足です。
骨に効く運動:骨は、強い力や衝撃がかかったときに反応します。オーストラリアの試験(LIFTMOR)では、骨密度の低い閉経後女性が、専門家の指導のもとで高強度の筋力トレーニングと衝撃のある運動を8か月続けたところ、腰の骨密度が2.9%増えました(運動しなかった群は1.2%減)。メタ分析でも、運動による骨密度への効果は「小〜中程度」で、強度の高い運動ほど効果が大きいとされています。
ただし、この試験は監視のもとで、安全に行える人を選んで行われたものです。骨が弱くなっている方が自己流で高い負荷をかけることを勧めるものではありません。背中を丸める運動を行った群で背骨の骨折が多かった、という古い報告もあります。
骨折を減らせるか:運動によって骨粗鬆症性の骨折が25%少なくなったというメタ分析があります。けれども、日本のガイドラインは運動を「提案」にとどめ、最適な種類や強度はまだ確立していないと明記しています。
転倒予防:コクランレビューでは、運動によって転倒が23%減り、とくにバランスと機能の訓練が有効でした。歩くだけ、筋トレだけのプログラムでは、効果ははっきりしませんでした。
まとめると、骨のための運動は、「歩く」に加えて、「筋肉に負荷をかける」「バランスをとる」ことを組み合わせるのがよい、ということになります。かかと上げ、スクワット、片足立ち。骨密度が低いと言われている方は、始める前に主治医に確認してください。
7|骨折のあとに起こること
太もものつけ根の骨折(大腿骨近位部骨折)は、日本で年間およそ19万人(2017年推計)に起きています。日本の調査では、1年後の死亡率は約10%。歩く力が骨折前の水準に戻るのは、術後6か月でおよそ半数です。
背骨の骨折(椎体骨折)は、約3分の2が痛みなどの自覚症状なしに起こります。「いつのまにか骨折」と呼ばれるゆえんです。手がかりは、身長です。
- 若いころ(25歳ごろ)から4cm以上縮んだ:背骨の骨折のリスクが2.8倍
- この3年間で2cm以上縮んだ:新しい骨折を疑う目安
ご自分やお母さまの身長を、久しぶりに測ってみてください。

8|治療を始める目安
ガイドラインでは、次のような場合に薬による治療が検討されます。
- 背骨、または太もものつけ根に、軽い力での骨折がある(骨密度にかかわらず)
- それ以外の場所に軽い力での骨折があり、骨密度が若い人の平均の80%未満
- 骨折はないが、骨密度が若い人の平均の70%以下
骨粗鬆症の薬は、この10年で選択肢が大きく増えました。「年だから仕方ない」ではなく、治療できる病気です。検診や人間ドックで「要精密検査」となった方は、整形外科や内科を受診してください。
9|保健室でお手伝いできること
女性とこどもの保健室では、理学療法士が、骨と転倒予防のための運動をご一緒に組み立てます。
- いまの筋力、バランス、姿勢、歩き方の確認
- ご自宅でできる、筋力とバランスの運動のご提案
- 骨密度が低いと言われた方の、避けたほうがよい動作と安全な動き方
- 産後・授乳中の背中や腰の痛みのご相談
- スポーツをしている娘さんの、体の使い方と月経のご相談
骨密度の測定や診断、薬の処方は医療機関で行われます。強い痛みや身長の低下がある場合は、まず整形外科の受診をおすすめしています。
10|今日から持ち帰っていただきたい5つのこと
- 骨密度のピークは18〜20歳ごろ。閉経後の10年間で、およそ15%下がります。
- 10代・20代のやせと無月経は、骨の貯金を減らします。3か月月経がなければ婦人科へ。
- 健康な人のサプリメントに、骨折を防ぐ確かな効果は期待しにくい。まずは食事から。
- ウォーキングだけでは、骨には足りません。筋肉に負荷をかける運動と、バランスの運動を足しましょう。
- 検診の受診率は5.9%。自治体の骨粗鬆症検診を調べ、身長を測ってみてください。
骨は、黙って減っていきます。だからこそ、症状のないうちに、一度確かめておく価値があります。
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「病院に行くほどではないけれど、誰かに診てもらいたい」——その段階でのご相談を、いちばん歓迎しています。
本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。
参考文献・出典
- 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』ライフサイエンス出版, 2025.
- Yoshimura N, et al. J Bone Miner Metab. 2022;40(5):829-838(ROAD研究:骨粗鬆症の有病率).
- 公益財団法人 骨粗鬆症財団「骨粗鬆症検診率」(2024年).
- 厚生労働省「健康日本21(第三次)」目標一覧.
- Orito S, et al. J Bone Miner Metab. 2009;27(6):698-704(日本人女性1,322人の骨量).
- 厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」.
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