子育て

【毎日コラム】目のためにできる、いちばん確かなこと —— 10月10日は目の愛護デー。こどもの近視の研究

10月10日は「目の愛護デー」です。10と10を横に倒すと、眉と目の形に見えることから定められました。

学校の視力検査で「B」や「C」の紙をもらってくる子が、年々増えています。スマホのせい、ゲームのせい、と言われることが多いのですが、研究がいちばんはっきり示しているのは、別のことでした。

1|小学生の3人に1人、高校生の7割

文部科学省の学校保健統計調査(令和7年度)では、裸眼視力が1.0に満たない子の割合は次のとおりです。

  • 幼稚園:23.90%
  • 小学校:36.07%
  • 中学校:59.35%
  • 高校:71.51%

過去にいちばん少なかった年と比べると、小学生は昭和54年の17.91%からおよそ2倍、中学生は35.19%から6割近くまで増えています。

ただし「視力1.0未満=近視」ではありません。文部科学省が別に行った近視実態調査(令和3〜5年度、約8,600〜8,900人)では、近視にあたる子は小学生で34.3%、中学生で60.4%。学年別に見ると、小1で17.3%、小6で52.8%でした。同じ子を追いかけたデータでは、小1のとき12.43%だったのが、小3で35.87%になっています。

低学年のうちに、急に増える。これが近視の特徴です。

※この調査の「近視」は、検査用の目薬を使わない独自の基準によるもので、眼科での診断とは異なります。

2|なぜ、近視を気にするのか

「眼鏡をかければ見えるのだから、いいのでは」。そう思われるかもしれません。

近視の多くは、眼球が前後に伸びることで起こります。一度伸びた眼球は、元には戻りません。そして伸びが強いほど、網膜が薄く引き伸ばされ、大人になってからの目の病気が増えることが分かっています。

複数の研究をまとめた分析では、強度近視の人は、近視のない人に比べて網膜剥離や白内障、緑内障などが多いことが示されています。福岡県久山町の調査では、近視による黄斑の病気がある人は、2005年の1.6%から2017年の3.6%に増えました。岐阜県多治見市の調査では、片目の失明の原因の第1位が、近視による黄斑の変性でした。

眼鏡で見えるようになっても、伸びた眼球そのものは変わりません。こどものうちに、どこまで進むかを抑えることに、意味があります。

3|いちばん確かなのは、外で過ごす時間です

学校で屋外の時間を増やした試験の結果。屋外授業を1日40分追加した群は近視の発症が少なかった

近視の予防で、ランダム化比較試験によって効果が確かめられているのは、屋外で過ごす時間を増やすことです。

中国・広州の試験(JAMA, 2015年)——小学1年生に、1日40分の屋外授業を追加。3年間で新しく近視になった子は、追加した学校で30.4%、しなかった学校で39.5%でした。

台湾の試験(2018年)——週11時間までの屋外活動を勧めたところ、1年間の近視の進みが小さく、急に進む子は約半分になりました。この試験では、1,000ルクス以上の明るさでも効果が見られています。

台湾の別の研究(2013年)——休み時間に教室の外へ出るようにした学校では、1年間の新しい近視が8.41%、そうでない学校では17.65%でした(無作為に分けた試験ではありません)。

なぜ外が良いのか。有力なのは光の強さです。室内はふつう数百ルクス、屋外は曇りの日でも数千ルクス以上あります。文部科学省の資料は「木陰でも1,000〜3,000ルクス以上を確保できる」としています。炎天下で遊ばせる必要はありません。

複数の試験をまとめた分析では、屋外活動を増やす介入で、近視になるリスクがおよそ半分になっていました。

4|ただし、言えないこともあります

正確に書いておきます。

「1日2時間で防げる」を直接証明した試験はありません。よく聞く目安ですが、実際の試験で追加されたのは40〜80分です。上海の試験では、40分追加した群と80分追加した群で、はっきりした差は出ませんでした。文部科学省の資料も「2時間に満たなくても効果の可能性」としています。

すでに近視になった子の進行を、外遊びで抑えられることは示されていません。メタ分析では、屋外活動は「近視になるのを遅らせる」効果はあったものの、「なってからの進み」を抑える効果は確認されませんでした。

つまり外遊びは、まだ近視になっていない、小さい子ほど意味があるということです。

5|スマホやゲームは、どのくらい関係しているのか

多くの方が、いちばん気にされるところです。研究の結果は、意外と割れていました。

  • 本や手元を見る作業(近業)が多い子は、近視がやや多い(オッズ比1.14)
  • スマホ・タブレットの使用は、近視とわずかに関連(オッズ比1.26)。パソコンも合わせると関連が強まる
  • 45研究をまとめた2025年の分析では、スクリーン時間が1日1時間増えるごとに近視のオッズが上がる
  • 一方で、関連なしとした総説もある

これらはすべて観察研究で、スクリーン時間は自己申告です。「スマホが近視の原因」と言い切れる段階ではありません。文部科学省の近視実態調査も、電子機器の利用について「一律に関連が大きいとはいえませんでした」としています。

考えられるのは、画面そのものより、画面を見ているあいだ、外にいないということかもしれません。

文部科学省は、目と画面を30cm以上離すこと、30分に1回は休むことを呼びかけています。禁止するより、離すこと、区切ること、そして外に出ること。そのほうが現実的で、根拠にも沿っています。

6|進行を抑える治療

近視になってからの進みを抑える治療も、選択肢が出てきました。コクランレビュー(104試験・17,509人)によると、治療しない場合と比べた1年間の差は次のとおりです。

  • 低濃度アトロピン点眼:眼球の伸びが約0.10mm少ない(確実性は非常に低い)
  • オルソケラトロジー(寝ている間につける特殊なコンタクト):約0.18mm少ない(確実性は中等度)
  • 多焦点ソフトコンタクト:約0.11mm少ない(確実性は低い〜非常に低い)

いずれも「進みを遅らせる」もので、止めたり戻したりするものではありません。2年より先の効果や、やめたあとの戻り(リバウンド)については、まだ根拠が限られています。

日本では、2024年12月に低濃度アトロピン点眼薬が、近視の進行抑制を目的とする国内初の治療薬として承認されました。2025年には、近視の進行抑制用のソフトコンタクトレンズも承認されています。オルソケラトロジーは、ガイドライン上は原則20歳以上が適応で、未成年は「慎重に処方」とされています。

費用や、お子さんに合うかどうかは、眼科でご相談ください。

7|3歳児健診の「目の検査」を、受けてください

近視とは別に、小さいうちに見つけたい目の問題があります。弱視です。約50人に1人の割合で起こり、治療が効く時期が限られています。

弱視の子は、生まれたときからその見え方なので、自分では気づきません。片目だけの場合、親も気づけないことがほとんどです。

そこで、3歳児健診に屈折検査の機器を入れる自治体が増えています。国の補助が始まったこともあり、導入している市区町村は2021年の28.4%から、2023年には85.7%になりました。

機器を入れた自治体では、治療が必要な子が見つかる割合が大きく上がっています。松江市で0.6%から3.6%へ、群馬県で0.1%から2.3%へ。それまで、見逃されていた子がいたということです。

健診の目の検査は、後回しにせず受けてください。家で行う視力検査がうまくできなかったときも、「できませんでした」とそのまま伝えて大丈夫です。

8|保健室でお手伝いできること

目の診断と治療は、眼科の仕事です。保健室では、こんなお手伝いができます。

  • 外で過ごす時間を、生活のどこに入れるか——保育士と一緒に考えます。公園に行けない日は、ベランダや玄関先でも構いません
  • 画面や本を見るときの姿勢——30cmが保てているか。理学療法士が、机と椅子の高さも含めて見ます
  • 健診や学校の検査結果の読み方——「B」「C」は何を意味するのか、受診はいつまでに、という相談
  • 画面との付き合い方——やめさせる、ではなく、区切り方を

9|今日から持ち帰っていただきたい5つのこと

  1. 小学生の36%、高校生の72%が、裸眼視力1.0未満です。近視は小1から小3のあいだに急に増えます。
  2. 予防で効果が確かめられているのは、外で過ごす時間を増やすこと。木陰でも十分な明るさがあります。
  3. 外遊びが効くのは、近視になる前。なってからの進行を抑える効果は示されていません。
  4. スマホと近視の関係は、研究で結論が分かれています。離す・区切る・外に出る、が現実的です。
  5. 3歳児健診の目の検査は、必ず受けてください。弱視は約50人に1人。本人も親も気づけません。

秋は、外で過ごすのにいちばんいい季節です。目のためにも。


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本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。


参考文献・出典

  1. 文部科学省「学校保健統計調査」令和7年度
  2. 文部科学省「児童生徒の近視実態調査」(令和3〜5年度)および解説資料(令和6年7月)
  3. He M, et al. Effect of Time Spent Outdoors at School on the Development of Myopia Among Children in China: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2015;314(11):1142-1148.
  4. Wu PC, et al. Myopia Prevention and Outdoor Light Intensity in a School-Based Cluster Randomized Trial. Ophthalmology. 2018;125(8):1239-1250.
  5. Wu PC, et al. Outdoor activity during class recess reduces myopia onset and progression in school children. Ophthalmology. 2013;120(5):1080-1085.
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  17. こども家庭庁 令和6年度母子保健指導者研修会資料/『3歳児健康診査における視覚検査の円滑な実施と精度管理のための手引書』令和5年3月

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