【毎日コラム】いじめ問題・わが子が「した側」と言われたとき
前回の記事の続きです。
言葉より先に、体が教えてくれることがある
女性とこどもの保健室での相談を通して感じるのは、子どもは「つらい」と言語化する前に、体で表現することが多いということです。
- 朝の腹痛・頭痛が、平日だけ、登校前だけに出る
- 寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝起きられない
- 食欲の変化、表情や姿勢の変化、スマホの見方の変化
- 持ち物の紛失や破損が増える、お金の減りが早い
- 好きだった習い事や遊びに行きたがらなくなる
これらは、いじめの証拠ではありません。あくまで「話を聞く入口」です。ただ、平日と休日で差があるときは、環境要因を疑う価値があります。
聞き方のコツ:「いじめられてるの?」と核心から入ると、子どもは守りに入ります。「最近、朝つらそうだね」と体の話から入る。出来事を問い詰めるのではなく、気持ちを聞く。そして、聞いたことを勝手に学校へ持ち込む前に、「どうしてほしい?」と本人に確認する——この一手間が、次に話してもらえるかどうかを決めます。
7|わが子が「した側」と言われたときに
いちばん動揺するのがこの場面です。ただ、追跡調査が示す通り、加害の経験もまた、多くの子が通る道です。以下の順序が、結果的にいちばん子どもを守ります。
- すぐに否定も断罪もしない。「そんな子じゃない」も「なんてことをしたの」も、どちらも事実確認を止めてしまいます
- 事実と気持ちを分けて聞く。何があったか、そのときどう思ったか
- 行為と人格を分ける。「あなたはひどい子だ」ではなく「その行為は認められない」
- 相手の痛みを想像させるより、価値観を確認する。前述の研究の通り、罪悪感より「いじめ観」のほうが効きます
- 学校とは対立ではなく情報共有から。記録(日時・場所・関わった人・何があったか・子どもの様子)を残しておくと、話し合いが感情論になりにくくなります
いじめ防止対策推進法第9条も、保護者に対し、規範意識を養う指導に努めること、そして被害を受けた場合には適切に子どもを守ることを求めています。「育て方の責任を問う条文」ではなく、「関わる役割がある」という条文として読みたいところです。

8|なぜ、そこまでして早く気づくのか
英国の全国出生コホート7,771名を約40年間(7〜11歳から50歳まで)追跡した研究(Takizawa, Maughan & Arseneault, American Journal of Psychiatry, 2014)は、子ども時代のいじめ被害が、成人期のうつ・不安障害・自殺念慮のリスク上昇、心身の健康度や認知機能の低下、社会的つながりの乏しさ、就労や収入の面での不利と関連していたことを報告しました。しかもこれは、子ども時代のIQ・行動上の問題・家庭の社会経済状況を統計的に調整した後でも残った関連です。(American Journal of Psychiatry)
「子どものうちのことだから」では済まない。だからこそ、気づくのが早いほど、できることが多いのです。
9|今日から持ち帰っていただきたい5つのこと
- 平時に価値観を言葉にしておく。「どんな理由があっても人を傷つけない」を、事件の前に伝える
- 「相談は告げ口ではない」を繰り返す。傍観者から相談者になれる子は、この一言を持っている
- 家庭の承認の雰囲気を守る。認められる場があることが、加害を抑える最大の環境要因だった
- 体のサインを入口にする。平日だけの腹痛・頭痛・睡眠の変化に気づいたら、まず体の話から
- 記録して、学校とは情報共有から始める。日時・場所・人・出来事・子どもの様子をメモに
そして何より——保護者が知っていること自体が、効果のある予防策です。研究がそう示しています。
相談できる場所
- 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省) 0120-0-78310 24時間・年中無休
- 子どもの人権110番(法務省) 0120-007-110
- お住まいの自治体の教育委員会・スクールカウンセラー
そして、女性とこどもの保健室でも、お子さんの体調のこと、育ちのこと、家庭での関わり方について、ご相談をお受けしています。「いじめかどうか分からないけれど、なんとなく気になる」——その段階でのご相談を、いちばん歓迎しています。
女性とこどもの保健室のオンラインサロン・Hagu me salonでは、保健室をお子様のサードプレイスとしても開放しています。

大人の目は複数ある方が気づくこと・防げることは多いはず。
保護者の方が不在の時間帯、学童に行くほどではないけど、お家でお留守番させるのも、、という時に。
保健室をお迎えを待つ場・家族の待ち合わせ場としてご自由に出入りいただけます。
Hagu me salonメンバー限定の特典がたっくさんです。詳細は下記より
参考文献・出典
- 文部科学省(2025)「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」 概要/調査結果
- 国立教育政策研究所「生徒指導リーフ(いじめ追跡調査)」 https://www.nier.go.jp/shido/leaf/leaf04.pdf
- 外山美樹・湯立(2020)「小学生のいじめ加害行動を低減する要因の検討」教育心理学研究 68(3), 295. J-STAGE
- 梅津直子(2020)「いじめ仲裁者と傍観者の差異に関する検討——ピアプレッシャーと教師への信頼感に注目して」日本心理学会第84回大会. J-STAGE
- 杉本希映・飯田順子・遠藤寛子・青山郁子(2025)「子どものいじめ防止に向けた保護者の自己効力感向上のためのプログラムの検討」心理学研究 95(6). J-STAGE
- 佐野(2024)「いじめの四層構造におけるいじめ傍観者の活用——生徒指導提要における傍観者指導を参考に」大阪商業大学. リポジトリ
- 森田洋司(2010)『いじめとは何か——教室の問題、社会の問題』中公新書
- Takizawa, R., Maughan, B., & Arseneault, L. (2014). Adult Health Outcomes of Childhood Bullying Victimization. American Journal of Psychiatry, 171(7), 777-784. AJP
- Ttofi, M. M., & Farrington, D. P. — メタ分析の要約は National Academies「Building Capacity to Reduce Bullying」より. NCBI
- いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)第2条・第9条. 文部科学省
- SEHSプロジェクト「保護者向けいじめ予防プログラム」 https://sehs.jp/295/
本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。個別の状況については、学校・専門機関・相談窓口にご相談ください。
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