子育て

【毎日コラム】こどもの算数のつまずき。「割合」が分からない子に、研究が勧める見方と家庭での関わり

こどもの算数のつまずき。「割合」が分からない子に、研究が勧める見方と家庭での関わり

今日から毎週金曜日は、こどもの「学び」について、研究で分かっていることをお伝えする日にします。保健室では、こどもの体や発達のご相談を受けていますが、「勉強でつまずいている」というお話も、実はよく出てきます。

初回は、算数の「割合」です。「5年生で割合が出てきてから、急に算数が分からなくなった」。このご相談は、本当に多いのです。

1|「10%増量」が何倍か、答えられた6年生は4割

2025年4月に行われた全国学力・学習状況調査(小学6年生、約95万人)に、こんな問題がありました。「10%増量」と書かれたハンドソープの詰め替えは、増量前の何倍の量か。正解は1.1倍です。

正答率は41.3%でした。そして、誤答でいちばん多かったのは「0.1倍」で、37.4%の子がそう答えています。

ここに、つまずきの正体が見えます。「0.1倍」と答えた子は、10%を0.1に直すことはできています。できていないのは、「増えた分」と「増えたあとの量」を区別することです。国立教育政策研究所の報告書も、「10%を0.1と捉えることはできているが、増量後の量が増量前の110%になることを捉えることはできていない」と分析しています。

「できない」のではなく、「どこで迷っているか」がある。これが、今日いちばんお伝えしたいことです。

2|1人のこどもを、16時間追った研究

割合のつまずきを、もっと近くで見た研究があります。上越教育大学の布川和彦さんが2005年に発表した事例研究です。公立小学校5年生の1クラス(20名)の「割合」の授業全16時間を記録し、そのうち1人の児童の学びの過程を、ていねいに追いました。

この子は、決して「分かっていない子」ではありませんでした。1%を基準にして考える、10%は100%の10分の1と見る、50%は半分、といった「手がかりの数」を使って、自分なりに答えを出していました。

それでも、授業の後半で、「50台の28%」を求める場面で「50÷28」と立式するなど、かける場面で割る式を使う混同が、くり返し起きていました。割合には「割合を求める」「比べられる量を求める」「もとにする量を求める」という3つの使い方があり、それが頭の中で混ざってしまうのです。研究者は、教師が別の場面で「÷0.2」という考え方を説明したことが、この混同の一因になった可能性も指摘しています。

そして、支援として提案されたのが、「二重数直線」でした。上の目盛りに量、下の目盛りに割合を書いて、「どの量をもとにしているか」をひとつの図の上で見えるようにする。さらに、割合の目盛りを消した「空の数直線」を使うと、こどもが自分で2つの量を関係づける必要が生まれる、という提案です。

これは1人の児童を追った事例研究で、効果を統計的に確かめたものではありません。けれども、「教える前に、その子がどう考えているかをよく見る」という姿勢を、具体的に示してくれる研究です。

勉強をするこどもたち

3|「計算できる」と「分かっている」は、別のこと

同じ全国調査で、分数の問題を見てみます。「1/2+1/3」を計算する問題の正答率は81.5%でした。ところが、0から2までを6等分した数直線の上で、示された点を分数で表す問題の正答率は35.4%。そして、「3/4+2/3」について、共通する単位分数と、それぞれがその幾つ分かを説明する問題は23.3%でした。

計算の手順はできる。でも、「分数がどのくらいの大きさか」を数直線の上で位置づけることや、「何の幾つ分か」を説明することは、多くの子にとってまだ難しい。この差が、割合のつまずきにもつながっています。割合は、「もとにする量を1としたとき、比べられる量はどれだけか」を考える、分数と小数の延長線上にある内容だからです。

そして、この「意味の理解」は、将来に効きます。米国と英国の大規模な追跡研究では、小学生のときの分数と割り算の理解が、知能や家庭の収入・学歴を考慮しても、5〜6年後の高校での数学の成績を予測していました。

4|数直線は、診断にも支援にも使える

こどもに、0から100までの数直線を見せて、「37はどこ?」と指さしてもらう。この「数直線推定」と呼ばれる課題の成績は、算数の成績とはっきり関連します。1万人以上を含むメタ分析では、相関係数は0.44で、整数より分数でその関連が強いことが分かりました。

数直線は、支援にも使えます。算数につまずきのある4年生259人を対象にした米国のランダム化比較試験では、分数を「数直線上の大きさ」として重視した12週間の指導が、「全体のうちの一部分」という教え方を中心にした指導よりも、分数の理解を大きく改善しました。

誤答そのものを使う方法もあります。小数の大きさについて、「正しい例と間違った例を比べて考える」教え方は、「正しい例だけを比べる」教え方より、誤った思い込みを減らしていました。間違いは、消すものではなく、「どう考えたか」を知る手がかりです。

全国学力・学習状況調査2025年小学6年算数の正答率。1/2+1/3の計算81.5%、数直線上の分数35.4%、単位分数の説明23.3%、10%増量は何倍か41.3%

5|「よく見る」支援の効果は、たしかだけれど、ほどほど

ここも正直に書いておきます。こどもの理解を見取りながら教え方を調整する「形成的評価」は、1990年代の総説で大きな効果が主張されました。しかし、2011年の再検討では、効果量の平均は0.20(数学では0.17)で、「当初言われたほど大きくない」とされています。

つまり、「見取れば必ずできるようになる」わけではありません。それでも、こどもの間違いの中身を見ずに「もっと練習しなさい」と言うより、はるかに手がかりが多い。保健室が大切にしている「評価してから、関わる」という姿勢は、算数でも同じです。

6|親の「算数こわい」は、手伝い方しだいで伝わる

家庭でできることについて、ひとつ知っておいてほしい研究があります。小学1・2年生とその親を対象にした米国の研究では、親の算数への不安が強いほど、こどもの1年間の算数の伸びが小さく、こども自身の不安も高くなっていました。ただし、それは「親が宿題を頻繁に手伝っている家庭」に限られていました。手伝いが少ない家庭では、親の不安とこどもの成績に関連はありませんでした。

算数が苦手だった方ほど、「ちゃんと教えなければ」と手伝いに力が入りがちです。けれども、不安を抱えたまま教えると、その不安が伝わってしまう。手伝うなら、「答えを教える」のではなく、「どう考えたの?」と聞く側に回るほうが、研究の方向とは合っています。

親子で短い算数のお話問題を楽しむアプリを使った研究では、特に親の不安が高い家庭で効果が見られました。ただ、効果の大きさについては研究者の間で議論があり、「有望だが確定ではない」というのが正確なところです。

もうひとつ。国際調査(TIMSS 2023)では、日本の小学4年生で「算数の勉強は楽しい」と答えた子は70%で、国際平均の81%を下回り、2019年の77%から下がっています。「得意」と答えた子も56%でした。点数は世界5位なのに、楽しさと自信が下がっている。「楽しい」を守ることも、立派な支援です。

絵本が並ぶ本棚

7|体の発達と、算数

保健室らしい視点を、最後にひとつ。手先や体の動きの不器用さ(発達性協調運動症)がある子は、計算の発達が同年齢の子より1〜2年遅れる傾向があるという研究があります。数の大きさを比べる基本的な力にも影響が見られました。ワーキングメモリ(頭の中に情報を保持する力)と算数の成績の相関も、メタ分析で0.35と報告されています。

算数のつまずきは、「努力が足りない」の一言では説明できません。体の発達、記憶の特性、言葉の力、そして「どこで迷っているか」。それらを全体として見ることが、支援の出発点です。保健室では、体の発達の評価を通して、学びの土台となる部分からお手伝いしています。

よくある質問

Q. 割合が分からないのは、うちの子だけですか?

A. いいえ。2025年の全国調査では、「10%増量は何倍か」に正答できた6年生は41.3%でした。割合は、多くの子がつまずく単元です。

Q. 家で割合を教えるとき、どうすればいいですか?

A. 答えを教える前に、「どう考えたの?」と聞いてみてください。「増えた分」と「増えたあと」の混同など、迷っている場所が見えてきます。数直線を一緒に書いて、「もとにする量はどれ?」と確かめるのも、研究で提案されている方法です。

Q. 親が算数が苦手だと、子どもに影響しますか?

A. 米国の研究では、親の不安が影響したのは、宿題を頻繁に手伝っている家庭に限られていました。教える側より、聞く側に回るのがおすすめです。

Q. 算数のつまずきと、体の発達は関係がありますか?

A. 体の動きの不器用さがある子は計算の発達が遅れやすいという研究があります。気になるときは、体の発達の評価も含めてご相談ください。

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本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。


参考文献・出典

  1. 布川和彦. 子どもの学習過程に基づく支援の構想 ―5年生「割合」単元における学習過程の分析を通して―. 上越数学教育研究. 2005;20:11-20.
  2. 国立教育政策研究所. 令和7年度全国学力・学習状況調査 報告書 小学校 算数. https://www.nier.go.jp/25chousakekkahoukoku/report/data/25pmath_04.pdf
  3. 国立教育政策研究所. 令和7年度全国学力・学習状況調査 問題別調査結果[算数・数学]. https://www.nier.go.jp/25chousakekkahoukoku/factsheet/data/25mondaibetuchousakekka_shouchuu_sansuu_suugaku.pdf
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