健康な体作り

【毎日コラム】夏が終わった鏡の前で —— 美容について、医学的に何が言えるか

夏が終わって、鏡を見るのが少し憂うつになる時期です。日焼けの跡、増えたように見えるしみ、なんとなく落ちた肌のはり。秋は、美容の相談がいちばん増える季節でもあります。

そこで今回は、「医学的に何が言えて、何が言えないのか」を、きちんと整理してみたいと思います。効く話も、効かない話も、同じ基準で並べます。

1|いちばん強い証拠があるのは、日焼け止めでした

美容に関する研究の多くは、規模が小さく、企業が資金を出し、短期間で終わります。そのなかで例外的に強いのが、オーストラリアで行われたナンブール(Nambour)皮膚がん予防試験です。

成人1,621人を対象に、日焼け止めを毎日使う群と、自由に使う群にランダムに割りつけ、4年半後に皮膚の状態を評価しました。結果、毎日使用群では皮膚の老化(光老化)の進行が24%少なかった(相対オッズ0.76)と報告されています。

この研究が重要なのは、公的資金で行われた無作為化比較試験だという点です。売りたい会社がスポンサーではない。そして、美容目的の介入で、ここまで設計のしっかりした試験は多くありません。

つまり——世の中にあるあらゆる美容法のなかで、いま最も確からしいのは、地味な日焼け止めです。夏が終わったからやめる、というのは、いちばん確実なものを手放すことになります。

2|喫煙については、双子が答えを出しています

皮膚の老化の研究は、「もともとの肌質の差では?」という反論がつきまといます。それを封じる方法が一つだけあります。双子を比べることです。

喫煙歴の異なる一卵性双生児79組を比較した研究(Okada ら, 2013)では、喫煙している側で、目の下のたるみ、上まぶたのゆるみ、口元のしわが、有意に強く現れていました。遺伝的背景が同じ人どうしの比較なので、体質では説明できません。

経口コラーゲンのメタ分析。企業資金の有無で結果が変わった

3|経口コラーゲンは、資金源で結果が変わりました

ここは、正直にお伝えしなければならない部分です。

2025年にThe American Journal of Medicine誌に掲載されたメタ分析は、経口コラーゲンサプリの23件の無作為化比較試験・1,474人を統合し直したものです。

全体としては、皮膚の水分量・弾力に改善が見られました。ところが、研究を資金源で分けて解析すると、結果が変わりました

  • 企業から資金提供を受けた研究:水分量・弾力・しわのいずれも有意に改善
  • 企業から資金提供を受けていない研究:いずれも効果が示されず

質の高い研究に限定しても、同じでした。著者らの結論は明快です——現時点で、皮膚老化の予防・治療にコラーゲンサプリの使用を支持する臨床的エビデンスはない

誤解のないように付け加えると、これは「危険だ」という話ではありません。有害事象の報告はなく、安全性の問題は指摘されていません。飲みたい方が飲むことに、私は反対しません。ただ、「効くと証明されている」という前提で高額を払う必要はない、ということです。

4|更年期に肌が変わるのは、気のせいではありません

一方で、しっかりした根拠があるのに、あまり知られていない話もあります。

皮膚のコラーゲン量と閉経の関係は、1980年代から繰り返し報告されてきました。Brincatら(1983, 1987)やAffinitoら(1999)の研究では、閉経後の年数とともに皮膚のコラーゲン量が減少すること、そして減少は閉経後の早い時期に最も速いことが示されています。

「40代後半から急に肌が変わった」という実感は、エストロゲンの減少という生理学的な変化に対応しています。気のせいでも、手入れをサボったからでもありません。

同じ時期、皮膚の下では筋肉も減っています。筋肉量は年に約0.47%ずつ減りますが、筋力の低下はその2〜5倍の速さで進みます。量より先に、質が落ちる。顔や首まわりの印象は、皮膚だけでなく、その下の構造にも左右されます。

5|姿勢と「自分の見え方」の、意外な関係

骨粗鬆症による背中の丸まり(後弯)に対する運動療法のランダム化比較試験(SHEAF試験)に、示唆的な結果があります。

1年間の運動プログラムで、実際の後弯角の改善は約3度——正直なところ、見た目でわかるかどうか、という数字です。ところが、参加者の自己イメージ(体に対する自己評価)は統計的に強く改善していました(p<0.001)

これをどう読むかは人によると思います。私は、こう受け取っています。「自分の体を自分で動かせている」という感覚そのものが、見え方を変える。鏡に映る角度が3度変わったこと以上に、そちらの効果が大きかった、ということです。

6|セルライトについて、正確なところ

セルライトは、思春期以降の女性の80〜90%に見られます。つまり、ほぼ全員です。

医学的には病気ではなく、正常な皮下組織の構造(女性では脂肪を隔てる線維の走行が縦向きであること)によって生じる見え方だと理解されています。

そして、数多く存在する治療法について、有効性の明確な証拠は確立されていません。マッサージ、機器、クリーム、サプリ——いずれも、一時的な変化を超える効果が安定して示されたものはありません。

「ほぼ全員にあり、病気ではなく、確実に消す方法はない」。これが現時点での正確な要約です。

7|では、何をすればいいのか

エビデンスの強さの順に並べると、こうなります。

  1. 日焼け止めを、一年を通して使う(無作為化比較試験・公的資金・光老化24%減)
  2. 吸わない(一卵性双生児での比較で明確)
  3. 筋肉を落とさない(閉経後の変化に、皮膚と筋の両方が関わる)
  4. 体を自分で動かす習慣を持つ(見た目の数値以上に、自己評価が変わる)
  5. サプリは、効果が証明されたものとしてではなく、嗜好品として

拍子抜けするほど地味です。けれど、地味なものほど証拠が強いというのは、医学ではよくあることです。

8|日焼け止めは、たいてい「足りていません」

日焼け止めについて、もう一段だけ踏み込みます。効果が確認されているのは事実ですが、研究で使われた量と、実際に私たちが塗っている量には大きな差があることが知られています。

SPFやPAの数値は、皮膚1cm²あたり2mgという条件で測定されています。ところが実使用の測定を集めた研究では、多くの人が塗っている量はその4分の1から半分程度にとどまっていました。

これは「SPF50を塗っているのに焼けた」の、かなりの部分を説明します。数値を上げるより、量を増やすことと、塗り直すことのほうが効きます。顔全体なら、クリームでパール2個分、液状なら500円玉1枚分が目安としてよく使われます。「多いな」と感じる量が、だいたい正解です。

そして秋冬。紫外線のうちUVBは夏に強く冬に弱まりますが、UVAは季節による変動が小さく、窓ガラスも通過します。しわやたるみといった光老化に関わるのは、主にこのUVAのほうです。Nambour試験が示した24%の差は、通年で使った群の話でした。

9|処方薬には、はっきり効くものがあります

ここは公平に書いておきます。化粧品の世界には根拠の弱いものが多い一方で、医薬品として光老化への効果が確認されているものもあります。

その代表がレチノイド(トレチノインなど、ビタミンA誘導体)です。1980年代以降、複数の無作為化比較試験で、しわ・きめ・色むらの改善が示されてきました。皮膚科で扱われる薬で、赤みや皮むけといった副作用があり、妊娠中は使用できません

「サプリでは証明されていないが、処方薬では証明されている」。この差は、値段ではなく、研究の設計の差から生まれています。気になる方は、美容サロンではなく皮膚科に相談するのが筋の通った順番です。

10|睡眠と、体重の増減

肌と睡眠の関係については、小規模な研究が中心で、日焼け止めほど強い根拠はありません。ただ、睡眠の質が低い群で皮膚の老化スコアが高かったという報告はあり、少なくとも「関係なさそうだ」と言える状況ではありません。

もう一つ、実感として大きいのが体重の急な増減です。短期間で落とすと、皮膚のたるみが目立ちやすくなります。前回のコラムで書いたとおり、日本の若い女性はすでに「やせ」の側に寄っていますから、美容目的の減量が必要な方はそれほど多くありません。落とすより、中身を変える——同じ体重でも、筋肉がある体とない体では見え方が違います。

11|「気にしないで」と言われても

最後に、数字ではない話を一つ。

見た目の悩みを相談すると、「気にしすぎ」「そのままで素敵」と返されることがあります。善意なのは分かりますが、悩んでいる本人にとっては、話が終わってしまう言葉でもあります。

SHEAF試験が示したのは、実際の変化が3度でも、自己イメージは大きく変わりうる、ということでした。見た目の悩みは、鏡の中の問題であると同時に、自分の体をどう感じているかの問題でもあります。後者は、体を動かすことで変えられる部分が確かにあります。

だから私たちは、「気にしないで」とは言いません。何が変えられて、何が変えられないのかを、一緒に仕分けするところから始めます。

12|保健室でお手伝いできること

女性とこどもの保健室には、理学療法士がいます。美容サロンではありませんが、姿勢・筋力・体の使い方という面から、見た目に関わる部分をお手伝いできます。

「痩せたいわけではないけれど、なんとなく老けた気がする」「産後から姿勢が戻らない」「更年期に入って体型が変わった」——このあたりは、体の構造の話として扱えます。エステでも病院でもない場所が向いている相談です。

そして、高いものをおすすめすることはありません。効くと証明されていないものを、効くと言って売らない。それだけは、お約束します。

13|今日から持ち帰っていただきたい5つのこと

  1. いちばん証拠が強い美容法は、日焼け止め。秋冬もやめないでください。
  2. コラーゲンサプリは、企業資金の研究でだけ効いていた。害はありませんが、期待は控えめに。
  3. 更年期の肌の変化は、生理学的な事実。自分を責める必要はありません。
  4. 筋力は、筋肉量より速く落ちる。見た目の土台は皮膚だけではありません。
  5. セルライトは、ほぼ全員にある正常な構造。消えないことに、お金を使いすぎないで。

夏の終わりに落ち込むより、確実なものだけ続ける。そのほうが、5年後の差は大きくなります。


ご相談・ご予約

女性とこどもの保健室は、理学療法士・助産師・看護師・保育士が連携して、妊活から更年期まで女性の体をみる施設です。流山本院は保育士・看護師による託児付き(生後1か月からお預かりしています)、勝どき出張院は完全予約制のプライベートサロン、横浜は産婦人科医と連携した骨盤底筋ケアを行っています。

女性とこどもの保健室の3つの拠点。流山本院(託児付き)、勝どき出張院(完全予約制プライベートサロン)、横浜みなみレディースクリニック(産婦人科医連携)

「病院に行くほどではないけれど、誰かに診てもらいたい」——その段階でのご相談を、いちばん歓迎しています。


本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。


参考文献・出典

  1. Petersen B, Wulf HC. Application of sunscreen — theory and reality. Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2014;30(2-3):96-101.
  2. Weiss JS, et al. Topical tretinoin improves photoaged skin: a double-blind vehicle-controlled study. JAMA. 1988;259(4):527-532.
  3. Oyetakin-White P, et al. Does poor sleep quality affect skin ageing? Clin Exp Dermatol. 2015;40(1):17-22.
  4. Hughes MCB, et al. Sunscreen and prevention of skin aging: a randomized trial. Ann Intern Med. 2013;158(11):781-790.(Nambour Skin Cancer Prevention Trial)
  5. Okada HC, et al. Facial changes caused by smoking: a comparison between smoking and nonsmoking identical twins. Plast Reconstr Surg. 2013;132(5):1085-1092.
  6. Myung SK, Park Y. Effects of Collagen Supplements on Skin Aging: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. The American Journal of Medicine. 2025;138(9):1264-1277.
  7. Brincat M, et al. Sex hormones and skin collagen content in postmenopausal women. Br Med J. 1983;287:1337-1338.
  8. Affinito P, et al. Effects of postmenopausal hypoestrogenism on skin collagen. Maturitas. 1999;33(3):239-247.
  9. Mitchell WK, et al. Sarcopenia, dynapenia, and the impact of advancing age on human skeletal muscle size and strength. Front Physiol. 2012;3:260.
  10. Katzman WB, et al. Study of Hyperkyphosis, Exercise and Function (SHEAF) randomized controlled trial. J Gerontol A Biol Sci Med Sci.
  11. Luebberding S, et al. Cellulite: an evidence-based review. Am J Clin Dermatol. 2015;16(4):243-256.

流山市でお身体悩みを相談するなら
女性とこどもの保健室
https://nozomi-salon.com/


〒270-0152
流山市前平井94アークヒルズ英103
TEL:04-7178-9773