妊娠中のケア

妊娠中の運動は赤ちゃんの生後1ヶ月時点での運動機能と関係している、という研究*

さて、今度は妊娠中の運動についての研究紹介です*

妊娠中の有酸素運動は児の1ヶ月時点での運動機能向上と関連している1) 

米国でのランダム化比較研究で、71名の健常妊婦が対象とされたものです。
エクササイズ群(週に3回、50分間の有酸素運動)と対照群(通常の日常生活)で比較したところ、

赤ちゃんの1ヶ月時点での運動機能(PDMS-2、GMQという医学的評価項目を用いた)において、
エクササイズ群の方が児の運動機能が良好(高スコア)でした。

結論として、妊娠中の適切な有酸素運動は児の運動・神経系の発達を促し、運動機能を高める可能性があり、これは小児期の肥満や運動機能低下を防ぐことにも繋がりうると言えます。

切迫早産の入院管理中におけるリハビリ介入は、早産率を高めることには繋がらない2)

また、最近の日本の研究において、切迫早産の診断で入院し安静管理となった患者へのリハビリ介入の有効性と安全性を検証したところ、
リハ介入群(妊娠28週以降)では非介入群より早産率が低いという結果でした。緊急帝王切開率に差はなしでした。
日本では切迫早産と診断されると、安静第一で入院後もベッド上生活が基本ですが、日本でこれまでほとんどされてこなかった研究テーマです。
まだまだ長期入院を減らすことはすぐには難しいのが医療現場の現実ですが、せめて合併症低減目的に入院中の妊婦のリハビリの介入を検討していくべきだと、専門家は指摘しています。

週150分以上のエクササイズを行なった群とそうでない群で早産率・妊娠中の入院率に差なし。3)

 

想起式アンケートで「週150分以上のエクササイズ(PAGの推奨)」を行なっていた妊婦と対照群、計3,006名。を比較した研究では
両群で早産率、妊娠中の入院率に差はなく週150分以上のエクササイズを行なっていた群では帝王切開が少ない傾向にありました(有意差なし)。

 

運動療法の介入により「帝王切開率の低下」と「体重増加軽減」が
有意に示された。悪化項目なし
4)

AJOG(2014年)のSystematic review + Meta-analysisという手法で行なわれた研究において、

16個のRCT (ランダム化比較試験)を解析したところ、
各々の試験で差異はありますが、具体的な介入(運動療法)は「時期は12-20週で開始、出産前まで」、「有酸素運動と筋力トレーニングを30-60分間、週2-4回」行なったところ、介入により「帝王切開率の低下」と「体重増加軽減」が有意に示されました。悪化項目はなしです。

以上、一部ではありますが妊娠中の運動については前向きな研究結果が多く報告されております*
日本産科婦人科学会監修のウェブサイトでは、「エクササイズ:適正であれば健康増進につながります。妊娠前から慣れている妊婦さんは、適度であれば継続していいでしょう。」と書かれており、定期的な有酸素運動を推奨しています。アメリカ、カナダの関連学会による声明でも同様の推奨をしており、「特別な合併症がなければ1日に30分以上の運動を週に数回」行うことができると書かれています。運動のメリットは大きく以下の3つのことに役立ちます。
1.体力維持
2.心肺機能向上
3.体重コントロール
特に3の妊娠中の適正な体重コントロールは、巨大児(4kg以上の赤ちゃん)の出産によるトラブルを回避したり、帝王切開を減らせたりといったメリットがあると考えられています。
体重コントロールを指導された際、単純に食事を減らす方も多くいらっしゃいますが、「食べるものを減らすのではなく、定期的な運動で体重コントロールを」が重要です。

 

あくまでも、【安全に】行なうことが不可欠。合併症がある場合は担当医に必ず相談し、合併症が無くとも妊婦健診で運動の内容や頻度を主治医に相談しながら行なうようにしましょう!

参考文献

1)Effects of Aerobic Exercise during Pregnancy on 1-Month Infant Neuromotor Skills.MCMILLAN, AMY GROSS; MAY, LINDA E.; GAINES, GEORGEANNA GOWER; More

Medicine & Science in Sports & Exercise. 51(8):1671-1676, August 2019.

2)Association between rehabilitation during hospitalization and perinatal outcomes among pregnant women with threatened preterm birth
(The Journal of Maternal-Fetal and Neonatal Medicine)

3)Exercise during pregnancy and risk of late preterm birth, cesarean delivery, and hospitalizations

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