【毎日コラム】赤ちゃんの頭の形は、いつまで変わるのか —— 向き癖・ヘルメット・うつぶせ遊びの研究

「頭の形、このままで大丈夫でしょうか」。生後2〜4か月ごろのお子さんを連れた方から、とてもよくいただく質問です。そのあとに続くのは、たいてい「ヘルメット、やったほうがいいですか」。
費用も大きく、始められる時期も限られる。迷うのは当然です。今日は、頭の形について研究で分かっていること、分かっていないことを、そのまま並べます。
1|ピークは生後4か月。そこから減っていきます

ニュージーランドで200人の赤ちゃんを出生から2歳まで追いかけた研究では、頭のゆがみ(斜頭・短頭)がある子の割合は、生後4か月の19.7%がピークでした。8か月で9.2%、12か月で6.8%、2歳では3.3%です。
オランダの追跡研究(5歳まで・248人)でも、向き癖のあった子の斜頭は生後7週が最も強く、その後2歳までに改善していました。5歳の時点で、短頭は全員が正常範囲。斜頭は80%が正常、19%が軽度、中等度以上は1%でした。
寝返りをし、おすわりをし、頭を床につけている時間が短くなるにつれて、形は変わっていきます。
日本のデータも見ておきます。生後1か月の153人を3Dスキャンで測った研究では、ごく軽いものまで含めると64.7%に左右差があり、重度は6.6%でした。ごく軽度を含む基準なので、海外の数字とは直接比べられません。
一方で、けがで頭部CTを撮った日本のこども300人を調べた研究は、7〜15歳でも4割に左右差が残っていたとし、「全員が自然に治るわけではない」と結論しています。治療歴が分からない一時点の調査ですが、「必ず治る」とも言えないことは、押さえておく必要があります。
2|仰向け寝は、やめないでください
頭の形の相談が増えたのは、1990年代に「赤ちゃんは仰向けに寝かせる」ことが広まってからだと言われています。乳幼児突然死症候群(SIDS)を防ぐための推奨です。
米国小児科学会は、頭の形への影響を認めたうえで、それでも仰向け寝は続けるべきと明記しています。こども家庭庁も「1歳になるまでは、寝かせる時はあおむけに」としています。令和6年のSIDSによる死亡は55人で、乳児の死因の第3位でした。
頭の形を気にして、うつぶせや横向きで寝かせることは、しないでください。また、向きを固定する枕やクッションについて、米国の脳神経外科学会のガイドラインは睡眠の安全上、推奨しないとしています。
なお、オランダの研究では、仰向け寝そのものより、いつも同じ方向を向いていること(向き癖)や、抱き方・授乳の向きが片寄っていることのほうが、頭の形と関連していました。
3|ヘルメットについて、分かっていること
いちばん知りたいところだと思います。結論から言うと、研究の結果は割れています。
ランダム化比較試験は、1つだけあります。オランダで、生後5〜6か月の中等度〜重度の赤ちゃん84人を、ヘルメットを6か月つける群と、自然に任せる群に分けた試験です(BMJ, 2014年)。
- 2歳時点の頭の形の変化に、差はありませんでした
- 完全に回復した子は、ヘルメット群26%、自然経過群23%
- ヘルメット群の保護者は全員が何らかの副作用を報告(皮膚のかぶれ96%、汗71%など)
ただし、この試験には批判があります。条件に合った403人のうち参加したのは21%だけで、ヘルメットがずれる・回ってしまう問題が73%で起きていました。最も重い子は対象から外され、実際に何時間つけていたかも測られていません。米国の脳神経外科学会は、この試験の評価を一段下げています。
観察研究では、違う結果が出ています。米国の4,378人のデータでは、完全に矯正されたのは保存療法で77.1%、ヘルメットで94.4%でした。13研究をまとめた分析も、短期的にはヘルメットのほうが良いとしています。ただし研究ごとのばらつきが大きく、別の総説は「矯正を早めるが、長期的に優れているかは示されていない」とまとめています。
米国の脳神経外科学会のガイドライン(2016年)は、保存療法を試しても残る中等度〜重度の場合、または月齢が進んでから受診した中等度〜重度の場合にヘルメットを推奨しています。裏を返せば、軽度や、まだ月齢が早い段階では、まず体位の工夫と理学療法、という順番です。
そして米国の大規模なデータでは、先に保存療法を試してからヘルメットに進んでも、最終的な結果は損なわれなかったと報告されています。「いま決めないと間に合わない」と焦らなくてよい、ということです。
4|日本での費用
位置的な頭の変形に対するヘルメット治療は、日本では健康保険が使えず、全額自費です。公立・大学病院のサイトで確認できた範囲では、約55万円(税込、2025年時点)でした。添付文書上、位置的頭蓋変形には生後2〜6か月を基準として始めるものとされています。
安い買い物ではありません。そして、効果についての研究は決着していません。この2つを並べたうえで、ご家庭で決めていただくことだと思います。「やらなかったら後悔するのでは」という気持ちも、「やってよかった」という声も、どちらも本当です。
5|向き癖には、早めの理学療法が効きます
ここは、根拠がしっかりしている部分です。
オランダで、向き癖のある生後7週の赤ちゃん65人を、小児理学療法を4か月受ける群と、受けない群に分けた試験があります。
- 重い斜頭になる子が、生後6か月で46%減、12か月で57%減
- 3〜4人が理学療法を受けると、1人が重い斜頭を免れる計算
内容は、向きにくい側へ向く練習、抱き方・授乳・遊ばせ方の工夫、起きているあいだのうつぶせ遊びなど。保護者への指導が中心です。
ただし5歳まで追跡すると、最終的な頭の形に差はありませんでした。理学療法は「治る・治らない」を変えるのではなく、治るのを早めるものです。
フィンランドの試験でも、生まれた直後から保護者に過ごし方を伝えた群では、生後3か月の斜頭が11%、伝えなかった群では31%でした。
早く始めるほど効く。これが、向き癖について言えるいちばん確かなことです。
6|うつぶせ遊び(タミータイム)
WHOは2019年のガイドラインで、まだ自分で動き回れない赤ちゃんについて、起きているあいだに1日合計30分以上のうつぶせを勧めています。強い推奨ですが、WHO自身が根拠の質は「非常に低い」としています。
16研究・4,237人をまとめたレビューでは、うつぶせ遊びは、体全体を使う運動の発達、寝返りやハイハイ、そして短頭の予防と関連していました。斜頭の予防については「はっきりしない」という評価です。ほとんどが観察研究なので、うつぶせ遊びが発達を「促す」とまでは言えません。
やり方は、米国の公的機関の案内が参考になります。
- 起きていて、大人が見ているときだけ
- 生まれてすぐは3〜5分を1日2〜3回から
- 生後2か月ごろまでに、1日合計15〜30分へ
- 眠ったら、仰向けに戻す
嫌がって泣く子も多いです。大人の胸の上でうつぶせにするところから始めても構いません。
7|受診したほうがいい頭の形
ごくまれに、頭の骨のつなぎ目(縫合)が早く閉じてしまう病気(頭蓋骨縫合早期癒合症)があります。海外の報告で、出生1万人あたり4〜10人。頻度は低いものの、向き癖による変形と見分ける必要があります。日本頭蓋顎顔面外科学会は、まれであるために「寝ぐせ」と判断されてしまうことも少なくない、と注意を促しています。
次のような場合は、小児科や形成外科・脳神経外科で相談してください。
- 生まれたときからゆがみがあり、月齢とともに強くなっている
- 頭に、骨が盛り上がった筋のような硬い部分がある
- 首がいつも同じほうに傾いている、片側にしこりがある(斜頸の可能性)
- 顔の左右差が強い
診断は診察が基本で、画像検査が必要になるのはまれだとされています。
8|保健室でお手伝いできること
- 向き癖の確認——どちらを向きやすいか、首の動きに左右差がないかを、理学療法士が見ます
- おうちでの過ごし方——寝かせる向き、抱っこ・授乳の向き、ベッドやおもちゃの位置。根拠があるのはこの部分です
- うつぶせ遊びの練習——保育士と一緒に、嫌がらない方法を探します
- 受診が必要かどうかの見きわめ
- ヘルメットを迷っている方の整理——勧めることも止めることもしません。研究で分かっていることをお伝えし、ご家庭で決める材料にしていただきます
生後1〜2か月のうちに来ていただけると、できることが多いです。
9|今日から持ち帰っていただきたい5つのこと
- 頭のゆがみは生後4か月がピークで、2歳では3.3%まで減ります。ただし全員が治るとは言えません。
- 仰向け寝はやめない。固定用の枕は使わない。安全のほうが優先です。
- ヘルメットの効果は、研究で決着していません。唯一の比較試験では差がなく、観察研究では優位。日本では自費で約55万円です。
- 向き癖への早めの理学療法は、重いゆがみを半分ほどに減らしました。治るのを早める効果です。
- うつぶせ遊びは、起きていて見ているときだけ。眠ったら仰向けに戻します。
迷っているあいだにも、できることはあります。まず、向きを変えるところから。
ご相談・ご予約
女性とこどもの保健室は、理学療法士・助産師・看護師・保育士が連携して、妊活から更年期まで女性の体をみる施設です。流山本院は保育士・看護師による託児付き(生後1か月からお預かりしています)、勝どき出張院は完全予約制のプライベートサロン、横浜は産婦人科医と連携した骨盤底筋ケアを行っています。

「病院に行くほどではないけれど、誰かに診てもらいたい」——その段階でのご相談を、いちばん歓迎しています。
本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。
参考文献・出典
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- 日本頭蓋顎顔面外科学会「頭蓋骨縫合早期癒合症」/小児慢性特定疾病情報センター


