【毎日コラム】夜が長くなる季節に、光の話を —— こどもの睡眠と、大人より敏感な目

秋分を過ぎて、日が短くなってきました。夕方5時にはもう薄暗い。この時期から、お子さんの就寝時刻が遅くなったり、朝起きられなくなったりするご家庭が増えます。
今日は、こどもの睡眠と光の話です。ひとつ、大人の感覚では想像しにくい事実があります。
1|日本の乳幼児は、17の国・地域で最も睡眠が短い
0〜36か月の乳幼児29,287人を17の国・地域で比べた調査があります。総睡眠時間は日本が11.6時間で最短、最長はニュージーランドの13.3時間でした。就寝時刻も、アジア圏は全体に遅い傾向です。
ただし、ここは正確に書いておきたいところです。同じ研究チームが3〜6歳の未就学児を13の国・地域で比べたところ、アジア圏は夜間の睡眠は短かったものの、昼寝を続ける子が多く、24時間の総睡眠時間では国による差がほとんどありませんでした。
「日本のこどもは世界一寝不足」という言い方は、0〜3歳については支持されますが、未就学児全体に広げると正確ではありません。また、いずれも保護者によるインターネット調査です。
日本の小学生についても新しいデータがあります。125校・6〜12歳のお子さんの保護者4,273人を調べた研究(2026年)では、平日の平均睡眠時間は9時間16分でした。睡眠が短いことと関連していたのは、年齢が高いこと、宿題や習い事、就寝前のメディア使用、就寝のルールがないこと。逆に長い睡眠と関連していたのは、就寝前の読書と外遊びでした。
2|推奨されている睡眠時間
米国睡眠医学会が2016年に出した推奨です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も、この値を採用しています。
- 生後4〜12か月:12〜16時間(昼寝を含む)
- 1〜2歳:11〜14時間
- 3〜5歳:10〜13時間
- 6〜12歳:9〜12時間
- 13〜18歳:8〜10時間
いずれも昼寝を含む24時間あたりの時間で、「規則的に確保されること」が条件です。なお生後4か月未満については、根拠が足りないとして推奨値が示されていません。新生児期に「何時間寝かせるべき」という目標はない、ということです。
3|こどもの目は、大人より光を通します
ここからが本題です。
九州大学の研究チームが、こどもと大人で夜の光の影響を比べました。結果、こどもは水晶体の光の透過率が高く(特に青い光)、瞳孔も大きい。そのため、目に入る光の量は大人の約1.48倍、実際のメラトニン(眠気に関わるホルモン)の抑制も約1.52倍でした。
同じ部屋の同じ明るさでも、こどもにとっては1.5倍まぶしいということです。
4|「豆電球くらいなら大丈夫」ではありませんでした
米国で、3.0〜4.9歳の健康なお子さん36人に、就寝直前の1時間、さまざまな明るさの光を浴びてもらった研究があります。

結果は、率直に言って驚きました。5ルクスから5000ルクスまで、どの明るさでもメラトニンが69〜99%抑えられていたのです。
いちばん暗い条件——5〜40ルクス、豆電球や廊下から漏れる明かり程度——でも、平均77.5%抑制されていました。そして光を消してから50分たっても、62%のこどもでメラトニンは元の半分未満のままでした。
別の研究では、就寝前後にわずか20ルクスを1時間浴びただけで、体内時計が26〜35分後ろにずれることも示されています。
ただし、これらは10〜36人の小規模な実験です。効果の大きさは印象的ですが、そのまま一般化するには慎重さが必要です。
5|秋冬の朝が、難しくなる理由
体内時計を前に戻す(早寝早起きの方向に動かす)のは、朝の光です。成人の研究では、薄暗い環境で1日過ごすと体内時計が後ろにずれ、翌朝に明るい光を浴びると前に戻ることが確認されています。
秋冬は、この朝の光が弱く、遅くなります。登園・登校の時刻に外がまだ暗い日も出てきます。
ここで、ひとつ重要な知見があります。14〜17歳を対象にした研究で、朝に90分の高照度光を浴びてもらったところ——睡眠時間を10時間確保した群は2.0時間前進したのに対し、睡眠を5.5時間に削った群は逆に2.6時間後退しました。
つまり、夜ふかしで睡眠が削られていると、朝の光の効果が打ち消されてしまう。「朝日を浴びさせているのに直らない」というご相談の背景には、これがあるかもしれません。
なお、「秋冬にこどもの睡眠が悪化する」ことを直接示したデータは、今回見つけられませんでした。あくまで仕組みの上での懸念として書いています。49か国のウェアラブルデータを分析した研究では、日照時間が長いほど睡眠がやや短くなる(=冬のほうが長く眠る)という、逆方向の結果も出ています。
6|スクリーンについて、最新の話
「寝る前のスマホ・タブレットは睡眠に悪い」——これは、よく言われます。実際どうなのか。
20の研究・約125,000人(平均14.5歳)をまとめた分析では、就寝時にデバイスを使っていると睡眠不足のオッズが2.17倍。そして使っていなくても、手の届くところにあるだけで1.79倍でした。
ところが2026年に発表された新しい分析は、別の結果を出しています。「同じ子の中で、スクリーンを多く使った日と少なかった日を比べる」方法で25研究・4,562人を調べたところ——就寝時刻が遅くなることとは関連したものの、総睡眠時間、寝つきまでの時間、睡眠の質とは有意な関連がありませんでした。
正確に言えるのは、「スクリーンが睡眠時間を奪う」という因果は、まだ確定していない。でも「就寝時刻が遅くなること」と「寝室に機器があること」との関連は、比較的一貫している、ということです。
厚生労働省の睡眠ガイド2023は、こう書いています——「デジタル機器は寝室には持ち込まず、電源を切って、別の部屋に置いておきましょう」。
7|就寝ルーティンには、効果が確認されています
数少ない、ランダム化比較試験で効果が示されている介入があります。
405組の母子(7〜36か月)を、決まった就寝ルーティンを行う群と行わない群に無作為に分けた研究です。3週間後、ルーティン群では寝つきまでの時間、夜間に起きる回数と時間が有意に改善しました。さらにお母さんの気分も有意に改善していました。対照群には変化がありませんでした。
0〜5歳児10,085人を13の国・地域で調べた研究(日本を含む)では、ルーティンを行う頻度が多いほど、また始めた年齢が早いほど、結果が良いという関係が確認されています。ただしこちらは横断研究なので、「ルーティンがあるから眠れる」のか「眠りやすい子の家庭でルーティンが続く」のかは区別できません。
8|今夜からできること
研究から導けることを、具体的に並べます。
- 就寝1時間前から、照明を落とす。全部消す必要はありません。天井の照明を消して、手元の明かりだけにする。色温度の低い(オレンジがかった)光のほうが、こどもへの影響は小さいと報告されています。
- 豆電球も見直す。5〜40ルクスでも8割近く抑制されます。真っ暗が怖いお子さんには、足元を照らす低い位置の弱い光を。
- 寝室に機器を置かない。使っていなくても関連が出ています。
- 同じ順番を、同じ時刻に。お風呂→着替え→絵本→消灯。内容より、順番が毎晩同じであることが大事です。
- 朝、カーテンを開ける。ただし夜ふかしが続いていると効果が打ち消されます。まず就寝を前に戻すことが先です。
- 外遊びを削らない。日本の小学生の調査で、外遊びは長い睡眠と関連していました。
9|睡眠と発達の関係について、正直なところ
「睡眠不足だと学力が下がる」という言い方をよく聞きます。ここも、正確に書いておきます。
5〜12歳・35,936人をまとめた最大のメタ分析では、睡眠時間と認知機能・学業成績の間に関連はありましたが、その大きさは「小さい」水準(相関係数0.08〜0.10)でした。知能とは関連がありませんでした。
日本の小中高生9,270人を調べた研究では、睡眠不足はネガティブな気分や不眠傾向と関連したものの、学業成績とは関連しませんでした。
つまり、睡眠を「成績のため」に整える根拠は、思ったほど強くありません。でも、気分や情緒との関連はより一貫して報告されています。私は、そちらのほうが日々の生活には大きいと思っています。よく眠れた日の機嫌の良さは、データを持ち出すまでもなく、ご家庭で実感されているはずです。
10|保健室でお手伝いできること
「寝ない」というご相談は、保健室でいちばん多いものの一つです。
お伝えしているのは、だいたい次のことです。生活の記録を1週間だけつけてみる(起床・就寝・昼寝・外遊び・入浴の時刻)。それを見ると、たいてい直すべき1か所が見つかります。全部変える必要はありません。
それから、親の睡眠です。先ほどの研究でも、就寝ルーティンでお母さんの気分が改善していました。こどもの睡眠の相談は、ほぼ必ず親の睡眠の相談でもあります。
流山本院は保育士・看護師による託児付きです(生後1か月から)。お子さんを預けて、まず自分が少し休んでから話す——それでいいと思っています。
11|今日から持ち帰っていただきたい5つのこと
- こどもの目は、大人の約1.5倍光を通します。同じ部屋が、こどもにはまぶしい。
- 豆電球程度(5〜40ルクス)でも、メラトニンは8割近く抑えられます。寝る1時間前から暗くする。
- 夜ふかしが続くと、朝の光の効果は打ち消されます。まず就寝を前に戻すのが先。
- 就寝ルーティンは、ランダム化試験で効果が確認されている数少ない方法です。内容より、毎晩同じであること。
- 睡眠と学力の関連は、思ったほど強くありません。でも気分との関連は、より一貫しています。
日が短くなる季節は、生活のリズムが崩れやすい時期です。崩れてからではなく、いまのうちに。
ご相談・ご予約
女性とこどもの保健室は、理学療法士・助産師・看護師・保育士が連携して、妊活から更年期まで女性の体をみる施設です。流山本院は保育士・看護師による託児付き(生後1か月からお預かりしています)、勝どき出張院は完全予約制のプライベートサロン、横浜は産婦人科医と連携した骨盤底筋ケアを行っています。

「病院に行くほどではないけれど、誰かに診てもらいたい」——その段階でのご相談を、いちばん歓迎しています。
本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。
参考文献・出典
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