【毎日コラム】父親が関われないのは、時間の話 —— データで見る父親とこどもの関わり

「もっと関わってほしい」と言う母親と、「関わりたいけど時間がない」と言う父親。保健室でも、この会話はよく耳にします。
この記事では、父親とこどもの関わりについて、データが何を言っているのかを確かめます。結論を先に書くと、父親の関わりの量を決めているのは意識ではなく労働時間でした。そして、父親自身のメンタルヘルスが想像以上に見過ごされていることも、数字に表れています。
父親を責めるための記事ではありません。構造を見るための記事です。
1|父親の関わりには、たしかに効果がある(ただし魔法ではない)
まず効果の大きさを、正確な水準で押さえておきます。
37研究・249の効果量を統合したメタ分析によると、父親の関わりと子どもの社会的行動の相関は——
- ポジティブな社会的行動:r = 0.203(95%信頼区間 0.100〜0.307、p < 0.001)
- ネガティブな社会的行動:r = −0.087(−0.135〜−0.038、p < 0.001)
- 東アジア文化圏では r = 0.304(欧米文化圏は0.075)
(Li Y, Hao J, Behavioral Sciences, 2026;16(8):1426)
r = 0.2 前後は「小〜中程度」の効果量です。確かにある。けれど、父親が関わるだけで子どもが劇的に変わるという話ではありません。ここを盛らないほうが、かえって実行しやすいと思います。
縦断研究24本をまとめた系統的レビューでは、そのうち22本が父親の関わりのポジティブな効果を報告していました。効果の出方には特徴があり、男児では行動上の問題の減少、若年女性では心理的問題の減少と関連していました。そして重要なのは、「特定の関わり方が他より優れている」という証拠は得られなかったという点です。(Sarkadi A ら, Acta Paediatrica, 2008;97(2):153-158)
認知発達についても、40研究をまとめたレビューが「父親の関わりと子どもの認知スキルの間に正の有意な関連があり、この関連は人種・民族および社会経済的地位を通じて一貫していた」と報告しています。(Rollè L ら, Frontiers in Psychology, 2019;10:2405)
「何をすればいいか」に正解はない。関わる量が効いている。これが研究の総意に近い形です。
2|関わりの量を決めているのは、労働時間だった
ここが、この記事のいちばんの芯です。
エコチル調査の父母43,159組のデータで、生後6か月時点の父親の育児行動7項目を分析した研究があります。結果は明快でした。父親の週労働時間が長いほど、調べたすべての育児行動の頻度が低かった(傾向性のp < 0.0001、共変量調整後)。

週40時間以下の父親と比べて、週65時間超の父親が「関与が低い群」に入る調整済みオッズ比は——
- 家での遊び:2.38倍(95%信頼区間 2.08〜2.72)
- おむつ替え:2.04倍(1.89〜2.20)
- 入浴:2.01倍(1.84〜2.18)
著者らの結論は、そのまま引用します。「長時間労働による時間的制約の増大が、父親を育児行動から遠ざける主要な要因である。長時間労働を対象とした介入が、父親の育児関与を促進する施策に貢献しうる」。(Kasamatsu H ら, Frontiers in Public Health, 2023;11:1100923)
そして日本の長時間労働の実態は、こうです。週60時間以上就労する雇用者の割合は男性6.94%、女性1.75%(2024年)。男性は女性の約4倍で、しかも子育て期にあたる35〜44歳(5.58%)が全年齢平均(4.58%)より高い。(厚生労働省『令和7年版 労働経済の分析』)
ただし——ここは着実に良くなっています。男性の週60時間以上就労は2015年の12.55%から2024年の6.94%へ、10年でほぼ半減しました。
3|育休取得率は5割を超えた。けれど「長さ」が残っている
令和7年度の雇用均等基本調査で、男性の育児休業取得率が50.9%となり、初めて5割を超えました(令和6年度40.5%、女性88.3%)。(厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」)
推移を並べると、この10年の変化の速さがわかります。
- 平成8年度 0.12% → 平成30年度 6.16% → 令和元年度 7.48%
- 令和3年度 13.97% → 令和5年度 30.1% → 令和6年度 40.5% → 令和7年度 50.9%
けれど、取得期間の分布を見ると、もうひとつの課題が残っています。
| 取得期間 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 5日未満 | 6.8% | 0.6% |
| 5日〜2週間未満 | 14.1% | 0.6% |
| 2週間〜1か月未満 | 28.0% | 0.5% |
| 1か月〜3か月未満 | 30.3% | 1.4% |
| 10か月〜12か月未満 | 2.4% | 28.7% |
| 12か月〜18か月未満 | 1.8% | 31.4% |
男性の約49%が1か月未満、約79%が3か月未満。取得率は5割を超えても、長さは女性とまったく違います。
そしてここに、日本の研究が意味を与えてくれます。母親396名を産後3〜6か月まで追跡した縦断研究では、32日以上の長期育休は産後3か月時点の父親の関与の高さと関連していたのに対し、短期育休(1〜31日)は父親の関与と明確な関連を示しませんでした。(Hironaka A, Watanabe H, Frontiers in Public Health, 2026;14:1891071)
「取ったかどうか」より「どれだけ取ったか」。これは制度を使う側にとって、かなり実用的な示唆です。
4|家事・育児時間の実数を見る
総務省「令和3年社会生活基本調査」による、6歳未満の子どもをもつ夫婦の1日あたり(週全体平均)です。
| 家事関連時間 | うち家事 | うち育児 | |
|---|---|---|---|
| 夫 | 1時間54分 | 30分 | 1時間5分 |
| 妻 | 7時間28分 | 2時間58分 | 3時間54分 |
差は5時間34分。ただし夫の時間は2016年の1時間23分から31分増えています(家事+13分、育児+16分)。
国際比較もありますが、ここは慎重に扱う必要があります。内閣府の白書に載っている比較図では日本の夫が1時間23分で7か国中最短ですが、日本のデータは2016年、米国2016年、欧州各国は2004年と年次がそろっていません。参考値として見るのが正確です。(内閣府男女共同参画局『男女共同参画白書 平成30年版』)
5|父親自身が、産後うつになる
ここは、あまり語られていない領域です。
43研究・28,004人を統合した国際的なメタ分析によると、産前から産後1年の父親のうつは10.4%(95%信頼区間 8.5〜12.7%)。そして最も高いのは産後3〜6か月で25.6%でした。父母のうつの相関は r = 0.308。(Paulson JF, Bazemore SD, JAMA, 2010;303(19):1961-1969)
日本のデータもあります。15研究をまとめたメタ分析では——
- 産後1か月以内:9.7%(95%信頼区間 7.4〜12.8%)
- 産後1〜3か月:8.6%(5.5〜13.3%)
- 産後3〜6か月:13.2%(11.6〜15.0%)← ピーク
- 産後6〜12か月:8.2%(1.3〜38.0%/信頼区間が非常に広く、この時期の推定は不安定)
そして最も重要な所見がこれです。産後うつの有病率は、男女で有意差がありませんでした。(Tokumitsu K ら, Annals of General Psychiatry, 2020;19:65)
「支える側」と「支えられる側」という図式が、ここで崩れます。父親の1割が、同じ時期に沈んでいる。そして父母のうつは連動する(r = 0.308)。片方だけを支える発想では足りない、ということです。
希望のある知見もあります。フランスの大規模コホート(父10,975人)では、育休を取得した父親は、取得しなかった父親に比べて産後うつのオッズが0.74倍でした(有病率4.5% vs 5.7%)。(Barry KM ら, The Lancet Public Health, 2023;8(1):e15-e27)
ただし同じ研究で、パートナーが育休を取得したことによる母親のうつの低下は確認されませんでした。育休は「母親を助けるため」だけのものではなく、父親自身のためのものでもある——そう読むのが、データに忠実です。
6|取っ組み合い遊びは、量より「質」
父親特有の関わりとしてよく挙げられる、身体を使った激しい遊び(rough-and-tumble play)についてのエビデンスです。
16研究・父子1,521組のレビューでは、父子の身体遊びと子どもの攻撃性、社会的有能さ、情動スキル、自己制御との間に弱〜中程度の効果が確認されました。(StGeorge J, Freeman E, Infant Mental Health Journal, 2017;38(6):709-725)
そして、量より質が効いていることを示した観察研究があります。2〜6歳の子ども85名の家庭での自由遊びをビデオ記録した研究では、取っ組み合い遊びの頻度が子どもの身体的攻撃性の高さと関連したのは、「父親が遊びの主導権を握れていない」場合だけでした。(Flanders JL ら, Aggressive Behavior, 2009;35(4):285-295)
つまり——激しく遊ぶことそのものではなく、興奮を上げて下げる、止めるべきところで止める、という枠づけができているかどうかが効いている。「たくさん遊べばいい」でも「激しい遊びは避けるべき」でもない、という形です。
7|制度を変えると、何が起きるのか(国際比較)
ここは結果が国によって割れていて、一方向に断定できません。正直に並べます。
- カナダ・ケベック州:5週間の「父親専用枠」導入で父親の育休取得が250%増加。著者は、育休取得が休業期間の終了後も長期にわたり家庭内の性別役割分業を弱める証拠を示した(Patnaik A, Journal of Labor Economics, 2019;37(4):1009-1059)
- スウェーデン:1995年の「パパ月」改革は父親の育休取得に強い短期効果をもたらしたが、病児看護休暇の取得は増えず、父母の長期的な賃金・雇用への実質的な効果も見られなかった(Ekberg J ら, Journal of Public Economics, 2013;97:131-143)
- スペイン:2007年の2週間有給父親休暇の導入後、対象となった親は次の子を持つまでの期間が長くなった。母親の労働市場への結びつきが強まり、追加の子どもの機会費用が上がったためと考察されている(Farré L, González L, Journal of Public Economics, 2019;172:52-66)
スペインの結果は、「男性育休を増やせば少子化が解決する」という単純な主張の反証になります。制度は効く。ただし、効く方向は設計次第——というのが正確な読み方でしょう。
8|今日から持ち帰っていただきたい5つ
- 関わり方に正解はない。「特定の関わり方が優れている」という証拠は出ていません。量が効いています
- 関われないのは、意識ではなく時間の問題。週65時間を超えると、遊び・おむつ替え・入浴のいずれも関与が半分に近づきます
- 育休は「長さ」で意味が変わる。日本の研究では32日以上で父親の関与と関連、1〜31日では関連なしでした
- 父親自身が沈むことがある。産後3〜6か月が日本でもピーク(13.2%)。産後うつの有病率は男女で差がありません
- 取っ組み合い遊びは、枠づけが大事。頻度より「止められるか」が効いています
9|保健室でしていること
保健室には、お父さんもいらっしゃいます。抱っこで痛めた腰や肩のご相談から入って、気づけば「実は最近ちょっとしんどくて」という話になることも少なくありません。
上に並べた数字のとおり、父親自身が産後の時期にしんどくなるのは、統計に表れるほど普通のことです。それを「自分が甘えている」と思わなくていい材料として、この記事を使っていただけたらと思います。
流山本院には男性の身体のケアもあり、勝どき出張院は完全個室です。そして流山本院は保育士・看護師による託児付き(生後1か月から)なので、お父さんが子どもを連れて来て、預けて自分の体を診てもらう、という使い方もできます。
お母さんが施術を受けているあいだ、お父さんと子どもが待っている——という光景も、よく見ます。そこから始まる関わりも、十分に関わりです。
ご相談・ご予約
女性とこどもの保健室は、理学療法士・助産師・看護師・保育士が連携して、妊活から更年期まで女性の体をみる施設です。流山本院は保育士・看護師による託児付き(生後1か月からお預かりしています)、勝どき出張院は完全予約制のプライベートサロン、横浜は産婦人科医と連携した骨盤底筋ケアを行っています。

「病院に行くほどではないけれど、誰かに診てもらいたい」——その段階でのご相談を、いちばん歓迎しています。
本記事は公開されている研究論文および公的統計にもとづく一般的な情報提供です。症状や発達の原因は人によって異なります。個別の状況については、医療機関や専門職にご相談ください。
参考文献・出典
- Li Y, Hao J「Father Involvement and Children’s Social Behavior: A Three-Level Meta-Analysis」Behavioral Sciences. 2026;16(8):1426. 全文
- Sarkadi A ら「Fathers’ involvement and children’s developmental outcomes: a systematic review of longitudinal studies」Acta Paediatrica. 2008;97(2):153-158. PubMed
- Rollè L ら「Father Involvement and Cognitive Development in Early and Middle Childhood: A Systematic Review」Frontiers in Psychology. 2019;10:2405. 論文
- Kasamatsu H ら「Impact of longer working hours on fathers’ parenting behavior when their infants are 6 months old: The Japan Environment and Children’s Study」Frontiers in Public Health. 2023;11:1100923. PubMed
- 厚生労働省『令和7年版 労働経済の分析』第1-(3)-5図「週60時間以上就労雇用者の状況」バックデータ
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」報道発表/事業所調査 結果概要
- Hironaka A, Watanabe H「Paternity leave duration and maternal depressive symptoms: a longitudinal study of paternal involvement and coparenting in Japan」Frontiers in Public Health. 2026;14:1891071. PubMed
- 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 結果の概要」PDF
- 内閣府男女共同参画局『男女共同参画白書 平成30年版』I-3-8図(家事・育児関連時間の国際比較/年次が異なる参考値)図表
- Paulson JF, Bazemore SD「Prenatal and postpartum depression in fathers and its association with maternal depression: a meta-analysis」JAMA. 2010;303(19):1961-1969. PubMed
- Tokumitsu K ら「Prevalence of perinatal depression among Japanese men: a meta-analysis」Annals of General Psychiatry. 2020;19:65. PubMed
- Barry KM ら「Paternity leave uptake and parental post-partum depression: findings from the ELFE cohort study」The Lancet Public Health. 2023;8(1):e15-e27. PubMed
- StGeorge J, Freeman E「Measurement of Father-Child Rough-and-Tumble Play and Its Relations to Child Behavior」Infant Mental Health Journal. 2017;38(6):709-725. PubMed
- Flanders JL ら「Rough-and-tumble play and the regulation of aggression: an observational study of father-child play dyads」Aggressive Behavior. 2009;35(4):285-295. PubMed
- Patnaik A「Reserving Time for Daddy: The Consequences of Fathers’ Quotas」Journal of Labor Economics. 2019;37(4):1009-1059. 論文
- Ekberg J ら「Parental leave — A policy evaluation of the Swedish ‘Daddy-Month’ reform」Journal of Public Economics. 2013;97:131-143. 書誌
- Farré L, González L「Does paternity leave reduce fertility?」Journal of Public Economics. 2019;172:52-66. 書誌

